12月のある日、先生から「万智さん、文部科学大臣奨励賞おめでとう」と言われ、はじめはなんのことだか分かりませんでした。しかし、それが夏休みに取り組んだ『うちわの研究』のことだとわかって、だんだん嬉しくなってきました。研究のきっかけはうちわで扇ぐと風がよく来るのに、下敷きやノートではあまり風が来ないのはどうしてだろうと思ったからでした。 研究は、形や固さ、あおぐものの厚さを変えながら進めていきました。一番大変だったことは、「風の強さをどうやって測るか」でした。でも、ロウソクを使うことによってうまく風の強さを測ることができました。研究で分かったことを使って『スーパーうちわ』を作りました。完成したスーパーうちわは、いつも使っているうちわと形などがほとんど変わりませんでした。私は昔からの人の知恵に大変おどろきました。 これからも自分たちのまわりにあるものや、不思議に思ったことを調べていきたいと思いました。
私が、科学研究をはじめたのは、3歳上の兄が、毎年夏休みに研究に取り組んでいるのを眺めているうち、私も小学生になったらやってみたいとうらやましく思っていたことがきっかけです。はじめは兄の真似をしたり、父に手取り足取り教えてもらったりして、応募していましたが、小学校中学年のころからか、なんとなく研究のイメージが見えてきて、自力でいろんなことを研究してきました。もちろん、研究の進め方などで壁にぶつかったときには、兄や父に、そして学校の先生に相談して、一つ一つクリアしていきました。
このような経験から、科学研究とは、普段経験していることなのに視点を変えると、とても不思議なことに気付き、科学的な目でそのなぞを解明することだと気付きました。
私は一つの研究がおわると、次はどの研究にしようかなとテーマ探しのため、専用の「不思議ノート」を作って、普段の生活の中で不思議と思ったことをどんどん記録していきます。その中で、今回の研究では、『雨の中をできるだけ濡れずに進む方法』を取り上げました。
この研究を行うにあたって、見えぬものを見えるようにすることの大変さ、当たり前のことを深く考えることの大変さを実感しました。今回、研究を進めるうちにぶつかった課題で、専門機関へ手紙で質問をしました。面識もないただの理科好きの中学生相手に、一流の研究者や、技術者である大人の皆さんが丁寧な対応をしてくださいました。今回の研究を通じて、大勢の大人の方からのとても人間味ある温かな愛情を体験することができ、心から感謝しています。
今回目標であった賞を受賞できました。次はまた、来年も再来年も授賞式のこの場に立てることを目標に研究を続けたいと思います。心はすでに次の研究へやる気満々であり、不思議ノートは満タンです。