福島県郡山市立郡山第六中学校

2008年
取材

先輩から受け継ぐデータは宝物

 

コンクールで部の存在をアピール

 放課後の郡山第六中学校は、ジャージ姿の生徒たちで活気にあふれていた。広々したグラウンドや体育館は練習に打ち込む運動部員たちでいっぱい。吹奏楽部が練習する音色も響いてくる。  「この学校はクラブ活動がとても盛んです。運動部はいろいろな大会で賞をとるなど活躍しているので、自然科学部の子供たちもコンクールで賞をいただき、全校生徒の前で校長先生から表彰された体験はとても励みになったと思います」。自然科学部の顧問・小友文乃先生はこう話す。  

各学年9 クラスの大規模校。
クラブ活動に打ち込む生徒が多い

10 人で完成させた共同研究

 第48 回自然科学観察コンクール( 平成19 年度) で「健闘賞」を獲得した『郡山市内を流れる河川の水質変化を探る H19』は、自然科学部の10 人全員で力をあわせて完成させた共同研究だ。「健闘賞」は、昨年新設された賞で、最終審査に残った作品が対象( 入賞作品を除く)。全国からの応募は「中学校の部」だけで1900 点近く。その中で最終審査に残るのは20点ほどという“ 狭き門”。
  「本当によかったと感謝の気持ちでいっぱいです。特に3 年生は自分たちの入試が迫っているのに、『この論文はどうしてもまとめたい』とぎりぎりまでよくがんばりました。締切直前には毎日遅くまで残り、土曜も日曜も学校に来ていたほどです」

論文として残したいという強い意志

 3 年生の意気込みには理由があった。市内の河川の水質変化の調査は、自然科学部の創立以来、受け継がれてきた大切なテーマ。自分たちが1 年生の時には同コンクールで1 等賞に輝き、東京での表彰式に参加した思い出もある。にもかかわらず、翌年の2 年生の時は調査はしたものの、論文のまとめが間に合わず、悔しい思いをした。
 「やはり論文の完成が活動のまとめになるので、前年、応募できなかった分、形に残したいという強い要望がありました。『僕たちがやりますから』と自分たちでどんどん計画して、調査もデータ処理も進めてくれました」

タンポポと河川の調査が2 大テーマ

 自然科学部の誕生は10 年前にさかのぼる。当時、同校に赴任した佐々木清先生( 第46 回・指導奨励賞)が新設し、現在の活動のベースを作った。今年の部員数は12 人。何十人にもなる大所帯のクラブが多い中ではこぢんまりとした人数だが、それだけに目的意識を持って入ってくる生徒が多い。
 「人数は少ないながら、先輩からの大きな財産を受け継がなくては、という自覚があるようです。自然科学部には二つの大きなテーマがありまして、一つは春に行うタンポポ調査、もう一つは夏の河川の水質調査です。秋にはデータ整理と論文作成。こんな流れができています。部活は1 年中、週末以外は毎日行っています」
 4 月~ 5 月はタンポポ調査。南校舎前の広いスペースを白いテープで区分けして、外来種と在来種、両方が混ざった雑種のそれぞれの分布を調べていく。雑種は「六中タンポポ」と名付けている。
 「タンポポのがくのつくりをひとつずつ見ながら数えていく地味な活動ですが、これで調査の基礎が身につきます」
 6 月にタンポポのデータをまとめて、7 月からは郡山市内の河川の水質調査の準備。夏休みには水質調査に全力を注ぐ。昨年は朝から夕方まで、暑い中で3 日間を調査に費やした。準備などを含めると夏休みの活動は1 週間ほど。9 月はそのデータ処理に追われ、10 月で論文をまとめあげる。
 

部室には過去10 年間のデータが
蓄積されている



今年度の年間目標を掲げた黒板

全校をあげて水質浄化を

 水質調査とあわせて、河川浄化も行っているのが同校の特徴だ。昨年までは、「総合的な学習」の一環として、全校で「亀田川EM 浄化活動」に取り組んでいた。学校に最も近い亀田川は市内でも水質が汚濁していた河川。全生徒がEM 液( 有用微生物群) を年に3 回、亀田川に流して水質浄化を試みた。全校集会での説明やEM 液の培養などは自然科学部の担当。「河川の水質調査=EM 液」が自然科学部の代名詞として認知されていることも、部員の励みになった。
 小友先生は同校に赴任して4 年目、自然科学部の顧問になって2 年目を迎える。
 「3 年前の1 等賞のニュースは地域のタウン誌にも載っていたので、すごいなぁと思っていました。顧問のお話があった時、専門が理科ではないので迷いましたが、違う目線で協力できればと。家庭科も環境、消費に力を入れているので、生活排水の問題を自分自身も学べればいいと思いました」
 昨年の夏、初めて河川の水質調査に同行したことで、小友先生自身もさまざまな発見があった。市内の川でも下流ほど汚れていることが如実にわかったり、水生生物を初めて目の当たりにして、川に対する愛着が一層増したという。

部員同士の絆が宝物

 取材に訪れた日、自然科学部の部室には高校生になったOB、OG が遊びに来ていた。「今年は1年生が6 人も入ったの。すごいね」と話がはずんでいる。
 「みんな目標を持って活動しているので、やるべきことをやれば、サロン的な要素があってもいいと思っています。部活を通して継続する力、集中力、コミュニケーションを学んでほしい。1 年から3 年まで男女の別なく仲良く活動できているようですし、調査や分析、パソコンでのデータ処理の方法なども先輩から後輩へよく伝えてくれていますね」
 パソコンに蓄積されている10 年分の調査データはもちろん、先輩から後輩へと培ってきた絆が一番の宝物。グループ研究の良さはお互いに助け合える点。小友先生は部員が安心して研究に打ち込めるように、いつもあたたかく見守っている。
 

アーチ型の造形が美しい通用口

学校プロフィール

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福島県郡山市立郡山第六中学校
ホームページ
〒963-8041 福島県郡山市富田町字十文字2 番
電話 024-951-0264 
生徒数=856人 各学年=9 クラス
小友(おとも)文乃

小友(おとも)文乃先生(44歳)
2年1組担任・家庭科担当

郡山第六中学校は、福島県のほぼ中央に位置する郡山市の市街地にある。北に奥羽山脈の安達太良山、東に阿武隈山系を望み、市内を北に流れる阿武隈川は太平洋に注いでいる。学校の周囲は新興住宅地で、学区内には団地もある。生徒数800 人を超える大規模校だが、クラスの人数は県の方針で約30 人となっており、きめ細かい指導が行われている。教育目標は「自ら学び考える生徒」「進んで奉仕する生徒」「心身の健全な生徒」。JR 郡山駅の西口にそびえる24 階の高層ビル「ビッグアイ」の中には「ふれあい科学館 スペースパーク」があり、市内の小・中学生に活用されている。

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