「桃花自然応援隊」
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2年間かけて「変形菌」を研究
昨年度、寺田先生は桃園第三小で6年生のクラスを受け持っていた。そのクラスの中に、第48回自然科学観察コンクール( 平成19 年度) で佳作を射止めた伊知地直樹君がいる。『変形菌はどのように餌を見つけるのか?』という作品だ。
「伊知地君は5年生の時から変形菌に興味を持って、土日ごとに博物館へ通っては学芸員の方に教えを請うたり、自分でも変形菌( モジホコリ) を飼って観察しながら、ずっとこのテーマを追いかけていました。彼はほかの子供たちからも尊敬される存在だったので、入賞して校長先生から朝礼で表彰された時には『やっぱりすごいなぁ』という反応でした」
伊知地君は5年生の時にも『ふしぎな生き物 変形菌』という作品を応募している。継続することで研究の深さを増していった。
「コンクールに応募するかどうかは、子供たちにまかせています。特に何も言わなくても、みんな自然科学観察コンクールのことを知っていて、早くから応募を目標にがんばる子もいます」
昨年度は計46人が夏休みの自由研究を応募した。自由研究は全員必須で、9月に提出された作品は、クラスごとに教室内に展示する。
「発見ノート」で発見や感動を共有
昨年度は指導奨励賞、第45回( 平成16年度) には指導特別賞を受賞している寺田先生だが、「私は本当に特別なことは何もしていないんですよ」とあくまで控えめ。 「でも、自由研究をまとめるための文章力や構成力は、毎日の『発見ノート』が役に立ったかもしれません」 「発見ノート」とは、学習帳に自分なりの日々の発見を綴って提出するもの。長さやテーマは自由。これを毎日読んでは朱入れしてコメントをつけて返却する。面白いトピックスは皆の前で読み上げたり、「これは」という文章は増し刷りして全員に配るなど、一人の発見や感動をクラスで共有できるように心がけた。「夏休みには何を研究するか考え中です」と早い時期に書いてくる子供がいれば、それを皆に紹介することで、「自分もそろそろ考えなくちゃ」という種をまく。 「即、効果は出ないかもしれないけれど、10人中1人にはヒットするかもしれない。伊知地君は休日に訪ねた研究所のことなどをよく書いていました」 |
![]() 樹木には名前のプレートが付いている |
「プロジェクト学習」でまとめる力を
「総合の時間」には、2 ~ 3 カ月のスパンでひとつのテーマに取り組む「プロジェクト学習」を行った。「技あり、にっぽん」というテーマで日本の工業をとりあげた時は、まず、曲がるストローを開発した地元のアイデア社長をゲストティーチャーとして招いた。さらに日本にはどんな技術があるか、江戸切子などの伝統産業から最先端のロボット「アシモ」までを調べ、最終的には劇にまとめて学習発表会を行った。 「プロジェクト学習では問題解決能力や自分で調べたこと、わかったことをどう表現するかという力をつけました。それが夏休みの自由研究にも発揮されるといい作品になります」 6月下旬の移動教室( 隔年で軽井沢と福島) も格好の素材。例えば「まるごと軽井沢」というテーマのもと、自然・産業・歴史などに分かれてグループで調べ学習を行った。 「自分の興味をポイントをしぼって事前に調べ、現地でそれを修正したり、付け加えたり、新しく発見したりという体験は、子供たちにとっても『やった!』という充実感が得られますね」 |
![]() 親子2代で通うケースも少なくない |
自由研究は集大成
「どんな科目にも共通しているのは、最初が肝心ということ。“ やりたい” という気持ちが学力の始まりだと思うので、意欲を高めるためにはどうしたらいいかを考えます。いかに子供が飛びつくような授業を最初に提供できるかですよね」 理科の授業でも、「てこの原理」の項目では、実際に板にくぎを好きなだけ打たせた後で、くぎ抜きを使ってそれを抜いてみるように指導する。「こうすると支点と力点について、からだの感覚でわかる。そんな体感が大切です」 「政治をうんと身近に感じてほしい」と、6 年生の社会で地元の再開発にスポットをあてたこともある。中野区が再開発する警察大学の跡地をとりあげ、これから何ができるのか、決めるのは誰かなどを、区役所の担当者や区議会議員を呼んで子供たちからの質問に答えてもらった。 「これから社会を担う世代に、本当に役立つことを勉強してもらいたい」というのが寺田先生の願い。 「うちの学校では算数でも理科でも社会でもどの授業でも“ 考える力” がつくように指導していると思います。夏休みの自由研究は日ごろ身につけたことの集大成。自然科学観察コンクールに応募して全国の作品が集まる中で評価されることは、学校とはまた違うレベルなので、ゴールとしてとてもいい機会だと思います」 |
![]() 校庭の一隅にある菜園 |
寺田礼子先生(56 歳)
「少人数算数」担当
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