第66回入賞作品 小学校の部
2等賞

テントウムシの研究 パート3 ~自然界でのサバイバル能力~

2等賞

茨城県つくば市立吾妻小学校 5年
川瀬 美羽
  • 茨城県つくば市立吾妻小学校 5年
    川瀬 美羽
  • 第66回入賞作品
    小学校の部
    2等賞

    2等賞

研究の目的

 小学1年生と4年生の時に、テントウムシの研究をした。テントウムシは甲虫の仲間で、卵から幼虫、蛹を経て成虫となる完全変態の昆虫だ。幼虫は3回脱皮して1〜4齢幼虫まで成長する。以前の研究では、家で育てた幼虫が本に書かれているより早く成虫になること、冷蔵庫で幼虫を育てると成長速度が遅くなり、長生きはするけれども次の齢数へ成長しないことなどが観察できた。
 今回の研究では、どんな条件がテントウムシの幼虫の成長に関係しているのか、詳しく調べたい。また、エサになるアブラムシがいない場所で、テントウムシの幼虫を見ることがよくある。飛べない幼虫がどうやってアブラムシを探しているのかも、詳しく知りたいと思った。
 実験を通してテントウムシの成長条件を知り、そのサバイバル能力を考察することにした。


ナミテントウの幼虫

研究の方法

 実験①〜②はナミテントウとナナホシテントウ、ヒメカメノコテントウの幼虫を対象とし、実験③はナミテントウとナナホシテントウを対象とした。実験①のグループI以外はエサのアブラムシを十分に与えて行った。

エサと成長の関係を調べる実験①

 家の幼虫の成長が早かった原因として、エサの量が考えられた。幼虫をエサの量が少ない(1日にアブラムシ3匹ほど)グループIと、アブラムシを十分に与えるグループIIに分けて飼育し、幼虫の大きさ(長さ)と齢数を記録する。グループIの幼虫は共食いしないように1匹ずつ容器に入れ、グループIIは数匹ごとにまとめてケースに入れ、成長に合わせ容器を大きくしていく。

明るさと成長の関係を調べる実験②

 明るい時間の長さも、家のなかと自然界では違っている。幼虫をそれぞれ、6〜23時まで明るい場所に置き、それ以外は暗い場所に置くグループI、自然の日の出日没に合わせて明るくするグループII、ずっと真っ暗な引き出しのなかに置くグループIIIに分けて飼育し、幼虫の大きさ(長さ)と齢数を記録する。
 上の実験でたくさんの共食いが起きてしまったので、追加実験を行った。6〜23時まで明るい場所で、それ以外は暗い場所で育てるグループIV、1匹ずつ容器に入れて真っ暗な引き出しで育てるグループVに分けて飼育し、幼虫の大きさ(長さ)と齢数を記録した。

気温と成長の関係を調べる実験③

 気温の高さも、家の内外の違いのひとつ。冷蔵庫では成長できなかったが、もう少し暖かい環境を調べてみる。幼虫を、室温で育てるグループIと、保冷剤を入れたクーラーボックス(15℃を想定)で育てるグループIIに分けて飼育し、幼虫の大きさ(長さ)と齢数を記録する。グループIIのクーラーボックスのなかが暗いので、グループIも暗い場所に置いた。

幼虫の捕食方法を調べる

 エサがない時に幼虫がどれくらいの距離を移動し、どうエサを見つけているのかを調べる。幼虫の齢数ごとに、15cmを何秒で移動しているか、定規で測った。3〜4齢幼虫は進む方向をすぐ変えてしまうので、広げた紙の上でどう動いたか、ペンでなぞって記録した。また、幼虫の近くにアブラムシを置いて、どう探すのかを観察した。幼虫にさまざまなサイズのアブラムシを与え、食べるかどうかも観察した。

幼虫の再生能力を調べる

 育てている幼虫のなかに1匹だけ、足2本が途中で切れている個体がいることに気がついた。幼虫の足はカナヘビのように再生することができるのか、観察してみた。

交尾の組み合わせを調べる

 オスとメスの成虫を数匹ずつ同じ容器に入れた場合、相手を替えて交尾することが多いのか、ずっと同じ相手と交尾するほうが多いのか、観察してみた。

実験と観察の結果

エサと成長の関係

 どのテントウムシも、エサが少ないグループIの幼虫はエサが十分なグループIIに比べ、成長が遅く体も小さめだった。ナミテントウのグループIの幼虫は24〜30日で蛹になり、29〜34日で成虫になった。ナミテントウのグループIIの幼虫は13〜16日で蛹になり、18〜20日で成虫になっている。このようにエサが多いグループは少ないグループより、ナミテントウとナナホシテントウでは2倍ほど、ヒメカメノコテントウでは1.5倍ほど成長が早かった。ナミテントウとヒメカメノコテントウは1日アブラムシ3匹の少ないエサでも成虫になれることが多かったが、ナナホシテントウは成虫になれない個体が多かった。ただ、成虫になれたとしてもグループIIと比べると、体が小さい個体が多かった(ヒメカメノコテントウは写真の撮り忘れで検証できず)


同じ4齢幼虫で大きさにこれだけの差がある

明るさと成長の関係

 ナミテントウとナナホシテントウはどちらも、真っ暗な場所で育てたグループVが、6〜23時まで明るい場所で育てたグループIVに比べ、少しだけ成長が遅く、少しだけ小さかった。グループVの幼虫はグループIVの幼虫に比べナミテントウで平均30匹ほど、ナナホシテントウで平均26匹ほど、食べたアブラムシの総数が少ない(いずれも追加実験の観察結果)。ヒメカメノコテントウは、暗い場所で育てた幼虫のすべてが成虫になれず、明るくないと成長できないのかもしれない。明るさはテントウムシの成長に、関係している可能性がある。

気温と成長の関係

 ナミテントウは、室温で育てたグループIより、涼しい15℃で育てたグループIIのほうが2.5倍ほど、成長が遅かった。ナナホシテントウは、グループIよりグループIIのほうが3.7倍ほど、成長が遅かった。これまでの研究でも、気温が高い季節のほうがテントウムシの成長は早い。気温が低すぎると幼虫は成長できないが、気温15℃だとゆっくりでも成長できることがわかった。しかも、成長が遅いおかげで15℃のグループIIの幼虫は、食べたアブラムシの総数がグループIより多かった。ナミテントウは平均50匹ほど、ナナホシテントウは平均90匹ほどと多く、どちらも室温で早く育ったグループより大きめの成虫になった。この大きさの違いは、気温ではなくエサの量が影響したと考える。
 室温と15℃で卵の孵化までにかかる日数も比べてみたところ、室温では3〜3日半、15℃では8〜9日だった。気温が低い時は孵化までの時間をかけ、暖かくなってアブラムシが増えるのを待っているのかもしれない。


上が室温、下が15℃で育った成虫

幼虫の捕食方法

 15cmを移動するのにかかる時間は平均で、1齢幼虫が54.8秒、2齢幼虫が22.6秒、3齢幼虫が15.3秒、4齢幼虫が10.0秒だった。生まれて間もない1齢幼虫のなかには、30cm以上移動できる個体もいた。
 幼虫は生まれてすぐエサがないと死んでしまうので、アブラムシの近くで孵化する。3齢幼虫くらいになると共食いをするようになり、遠くまでエサを探しにいくようになる。空腹時は遠くまでエサを求めて移動し、遠くへ行くかどうかは方向を変える回数で決まっているように見えた。アブラムシを何匹か食べた後は、近場を探していた。視覚や嗅覚ではエサを見つけられず、目の前にアブラムシを置いても食べないこともある。むしろ、アブラムシのいそうな植物を目標にしているようだった。1齢幼虫は小さなアブラムシしか食べられないが、何匹かで大きいアブラムシを捕まえるのを観察できた。


4齢幼虫の空腹時の移動

再生と交尾

 2本の足が切れた幼虫は、4齢幼虫までそのまま成長した。ところが蛹から羽化した後に見てみると、足は完全に再生していた。テントウムシには再生する力がある。
 2匹のオスと3匹のメスを同じ容器に入れて、交尾する順番を観察した。オスは相手を替え、たくさんのメスと交尾して子孫を残そうとしていた。アブラムシがいないと成虫は交尾をせず、卵もうまなくなった。これは、エサがなければ幼虫が育たないかからだと思う。

指導について

川瀬 美奈子

 本研究は、娘が見たことのない模様のテントウムシを見つけ、興味を持ったことをきっかけに始まりました。1年生の頃は観察研究でしたが、学年が上がるにつれて生態や自然環境との関係へと発展していきました。家庭にある限られた道具で試行錯誤を重ね、新しい発見をすることに研究の面白さを感じている様子がうかがえました。指導としては、娘自身の気付きにつながるような問いかけを意識しましたが、想定以上の答えが返ってくることも多く、その成長に驚かされました。高学年になった今年は多忙な中で最後までやり遂げられるか不安もあったようですが、新たな発見をすることができ、また、その結果をこのように評価していただいたことが大きな達成感となり、今後の学びへの糧になったと感じております。自然科学の面白さや考察の大切さを日々ご指導くださっている学校の先生方、ならびに審査に携わってくださった皆様に、心より感謝申し上げます。

審査評

[審査員] 邑田 仁

 私たちの身の回りには多くの動植物が生きていますが、それらの姿や名前は知っているにしても、どのように生きているか知っていることは少ないのではないでしょうか。まず育ててみることをきっかけとして、観察が深まり、そこで出てきた疑問点が研究のテーマに発展していくことが多いと思います。この論文は、テントウムシについてこれまでに行ってきた先行研究の経験をふまえて、餌の量が成長に与える影響、明るい時間の長さが成長に与える影響、温度が成長に与える影響などを調べています。実験計画が的確に組み立てられており、説得力のある結果を生み出しています。餌となるアブラムシの量が疋数で数えられることも、この実験をわかりやすいものにしていると思います。また、複数の種類について実験することで、結果を一般化するのに役立っています。

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