第54回入賞作品 小学校の部
1等賞

私のクモ日記 ―ジョロウグモとの1年間―

1等賞

岐阜県関市立武芸小学校3年
山口加廉
  • 岐阜県関市立武芸小学校3年
    山口加廉
  • 第54回入賞作品
    小学校の部
    1等賞

    1等賞

研究を始めたわけ

 1枚の葉っぱが空中に浮いていた。クモの糸に宙づりになっていたのだ。その糸やクモに興味をもった。

〈ジョロウグモの一生〉

◇観察(2012年秋~冬)のまとめ

● 9月終わりから10月半ばにかけて結婚する。メスは1~2週間でお腹(なか)がふくれる。お腹はふくれる前の2倍の大きさ。メスの体長は大きくならず、食べたエサのエネルギーは全て赤ちゃんに送られるのだろう。
● メスの背中の模様は変化する。妊娠しているメスの背中は“しま模様”だ。最終脱皮で変化するらしい。
● メスは11月初めから半ばにかけていなくなる。卵を産んだ後、再び巣に帰ってくることがある。そのメスのお腹は、産む前の半分の大きさだ。しかし、母グモは真冬前に死んでいく。卵は“卵のう”の状態で冬を越し、春を待つ。
● オスは1匹のメスに対して、何匹も集まってくることがある。オスはお腹のふくれたメスにも近づく。メスと結婚したオスはいなくなる。
● ジョロウグモは、気温が10以下でも生きられる。

◇観察(2013年春~夏)のまとめ

● 5月半ばすぎに、卵のうから子グモたちがふ化する。生まれたばかりの子グモの体は赤く、背中に薄い“しま模様”がある。
● 1個の卵のうから、一度にたくさんの子グモが生まれる。全ての卵から子グモがふ化できるのではなく、卵のうのまま死ぬのもある。
● ふ化した子グモたちは、卵のうの周りに集まる。
● ふ化して数日たつと、子グモたちは自分で網(あみ)を張り始める。日がたつと、張る網も大きくなる。
● ふ化後1週間以上すると、体色は薄いピンク色に変わり、背中の模様もはっきりしてくる。
● 子グモたちに太陽の光を当てると、動きが活発になる。初めての食事も自分で上手に食べる。
● 子グモは、自分の体より大きな虫は食べない。自分の体と同じか小さい虫を食べる。
● 脱皮した直後のクモの足は“透けて”いる。

〈とべ!子グモたち〉

 ふ化後1回目の脱皮をした子グモは、さらに数日してから“バルーニング”(糸を風に乗せて、空中を飛ぶこと)をするという。本当に糸を使って飛ぶのか、園芸支柱の先に子グモを置いて検証した。

《分かったこと》

子グモは1匹では上手にバルーニングができないが、何匹か一緒だとうまくできる。バルーニングをするまでは、集団が好きなようだ。

〈ジョロウグモの巣について〉

◇どこに巣を作るのか?

 家の周囲の巣(125匹)を2012年秋(9/17~30)に調査した。さらに、まだ大人になっていない夏のクモ(120匹)を13年8/6~7に調査し比較した。

《分かったこと》

ジョロウグモは大人になるにつれて、高木の枝や建物の軒下、電柱、電線といった高い位置に巣を作る。子グモは自分より大きな虫は食べず、小さな虫は低い所を飛ぶ。ジョロウグモは、自分の体サイズに合うエサが取れる場所に巣を作るのだ。巣を張る方位は、秋は南北、夏は東西の方向が多い。風向きにほぼ一致した方向に作られやすい。巣にいる時の背中の向きも、秋は北、夏は南に向けているのが多い。

◇巣での位置は決まっているのか?

 ジョロウグモの背中をピンセットでツンツンして、巣の反対側に誘導した。1~5時間後には全て元に戻った。巣にいる位置は決まっている。クモは全て頭を下にしている。斜めになっている巣の表側(上面)にいるのは1匹、裏側(下面)には9匹。ほとんどは裏側にいる。

◇巣の大きさと体長の関係

 クモ30匹の体長と巣の大きさを(縦幅と横幅の長い方を“長手”として)調べた。クモの体長と巣の大きさは比例し、クモが大きいと巣も大きい。大人のクモは大きな巣を作り、高い所の巣ほど大きい。

◇巣と風の関係

 中心となる園芸支柱から少し離れた周囲5カ所に支柱を立て、一方向から扇風機で風を当てた。中心支柱に置いたクモは、糸を流して風下の支柱に移り、しばらくして隣の支柱との間に糸(橋糸)を張った。両端に補強の糸も張られたが、夜になり、そばの物干し竿に移っていた。ライトを当てると動きを止めてしまう。朝になると、家の軒下に巣を作っていた。思うようにはいかないが、クモは風を利用して糸を飛ばし、強い風から避けるように巣を張ろうとするなど、風が影響することが分かった。

◇巣の張り方

 再度、中心支柱と周囲5本の支柱を使い、今回は扇風機で風を当てずに、自然のまま巣を作らせた。対向する2本の周囲支柱の間に、巣を張った。

《分かったこと》

● 橋糸を基準に巣は作られる。
● 橋糸は、お腹の先の“糸いぼ”から風に流し、飛ばされて作られる。
● 糸を飛ばす時は背中を丸めて、お腹を突き出すようなポーズをする。
● 縦糸は、橋糸の途中からぶら下がり、糸を流して作る。
● 風に流す糸は長さ2m以上の時もある。
● 脱皮する前は巣を張らない。
● 橋糸は日中に張るが、縦糸から後の糸は日が暮れてから張る。
● 出す糸はとても弱い空気の動きだけでも飛ぶ。
● 横糸は外側から中心に向かって、反時計回りに張る。
● 横糸を張る速さは、縦糸よりも速い。

◇同じ所に巣を作るか?

 玄関の軒下の巣を壊すと、翌日、また近くに作っていた。また壊すと、作らなくなった。“危険”を感じたのか。背にペイントして調べると、元いた自分の場所を覚えているわけではない。ジョロウグモに巣を作ってほしくない時は、巣が作られるごとに、はらい続けること。遠く離れた高い木に、引っ越しさせることだ。

〈ジョロウグモの糸について〉

◇巣と糸の観察

 巣に白い塗料を吹き付け、のりを付けた黒い画用紙にくっつけて“巣たく”を作った。巣に霧吹きすると、横糸だけに水滴が付いた。顕微鏡で観察すると、横糸に玉状のもの(粘球)が付いている。縦糸は、何本か束になった糸が2本ある。

◇糸の強度

 10匹の巣にある横糸、縦糸、巣の一番外側の枠(わく)糸、クモが移動する時に常に引き出している“しおり糸”(牽引糸)に、紙テープが何枚乗るか調べた。枠糸は平均37.1枚、縦糸15.6枚、しおり糸14.6枚、横糸3.7枚だった。
 一番強い枠糸が何gの重さに耐えるか。横に張った枠糸に折り紙で作ったかごを通し、1円玉(1g)を糸が切れるまで入れた。枠糸(30本)の平均の強度は36g、最大は93gだった。これらは大人(12年10月)のクモの枠糸だ。大人になっていない(13年7月)のクモの枠糸では平均強度24g、最大32g。大人のクモの方がバラつきはあるが強い。枠糸10㎝の“伸び強度”は、大人のクモ(10匹)が平均43%の伸び、大人になっていないクモは同46%と、若いクモの方が少しだけ、よく伸びる。

◇糸を弱める原因は?

 枠糸をシャーレに入れ、5条件(室内・水を入れて室内・冷蔵庫内・屋外・カバーをして屋外)で5日放置し、重さ強度や糸の変化を観察した。その結果、室内放置では乾燥した。水にひたすとふやけた。冷蔵庫では糸がほつれず、最初の状態のままだ。高温の屋外では糸がほつれるが、太陽光を当てた方が強度は弱まりにくい。枠糸の強度は乾燥、雨、高い気温、太陽の光によって弱くなる。
 本によると「クモの糸は太陽光で強度が増す」という。朝に張ったばかりの巣の枠糸で、強度変化を調べた。巣ができた翌日に一番弱くなり、3日目に最強、5日目に初めの強度に戻った。
ジョロウグモはこの糸の性質を利用して、巣を張り替えているようだ。本では「2日目に、出したばかりの強度と同じになる」とあるが、異なる結果となった。おそらく気温や湿度、日照時間などの条件が違ったためだ。

◇綿毛実験

 ジョロウグモの巣に植物の綿毛を乗せると、勢いよく綿毛に近づき、足でさわった。エサじゃないと分かり、その場を去って元の位置に戻った。ジョロウグモは糸の揺れでエサを感じ、目ではなく、足でエサを判断しているようだ。

研究を終えて

 太陽光が、できたばかりのクモの糸を強くしていることもすごい。強度を計算し15本の枠糸で人形(255g)をぶら下げることもできた。1年という短い生涯を生きるたくましさ。700匹以上のジョロウグモさん、ありがとう。

指導について

指導について山口 直樹

 昨年度の研究で、アメンボの浮く秘密について、彼女の視点から観察や実験を通じ究明したことが生命や自然に対する強い好奇心、学習意欲、自信に繋がりました。今回は、宙に浮く落ち葉に端を発し、ジョロウグモの巣や糸、生態についての研究です。当初は子どもらしい発想だが難しいテーマを選んだなと思いましたが、データを集めるため学校から帰るとすぐ巣の調査に行ったり、時にはスローライフのクモを観察するため何時間もクモとにらめっこしている状態が続いても、持ち前の好奇心と粘り強さで、『謎』を1つ1つ究明していきました。指導としては膨大なデータを見やすくまとめるように表やグラフにすることを教えました。自発的に習っていない漢字も辞書で調べて読みやすく書けました。本研究でのさまざまな経験は、彼女に達成感や知る喜びをもたらし、根気・探究心等一回りも二回りも成長させてくれたと思います。

審査評

審査評[審査員] 小澤 紀美子

 1等賞おめでとうございます。多くの工夫を重ねながらジョロウグモの生態を観察して追究している作品です。約1年間の観察からジョロウグモの生活史を明らかにし、「問い」を仮説としてたて実験・観察を継続している力作です。
 それは、子グモがふ化後1回目の脱皮をして風を利用して糸を飛ばすバルーニングをするが、数匹で助け合ってすること、巣をつくる場所・高さ・方位を秋と夏で比較したこと、巣は傾斜していて巣の中心と裏側にジョロウグモがいること、体長と巣の大きさには関連があること、風の強弱を利用して巣をつくること、巣はたて糸とよこ糸から成り、よこ糸には粘球が等間隔についていること、たて糸は2つの細束からなっていること、糸の強度の実験では糸まき機やわく糸の強度測定装置を考案、子グモのわく糸が伸びることを明らかにし、わく糸は乾燥、雨、高温、太陽光で弱くなるが3日目に最高の強度になる、などさまざまな実験装置を工夫した方法を用いています。さらに単に実験・観察するだけでなく、着眼点もすばらしく文献で確認して進めていく追究の論理性、考察の明確さがすばらしく、わかりやすくまとめられた作品です。

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