第53回入賞作品 小学校の部
継続研究奨励賞

だんごむしとわらじむしってふたごかな? パートⅢ
~どうしたの? 甲らの色白と土の色黒~

継続研究奨励賞

島根県出雲市立四絡小学校 4年
片岡 柾人
  • 島根県出雲市立四絡小学校 4年
    片岡 柾人
  • 第53回入賞作品
    小学校の部
    継続研究奨励賞

    継続研究奨励賞

研究のきっかけ

 1年生の時からダンゴムシとワラジムシを飼っているが、甲らの色がだんだん薄(うす)くなってきたような感じだ。「飼い方が悪かったのかな?」それとも「甲らが色白になる条件があるのかな?」と気になった。また、ダンゴムシもワラジムシも土にもぐることが多くなり、その土の色が黒くなっていることにも気がついた。「甲らの色と関係があるのかな?」と思い、調べることにした。

予想

 飼育ケース内では「自由に動けない」「危険がないので身を守る必要がない」「栄養がかたよる」「一日の変化がない」など、自然の中で生活するのとは違っている。そのために甲らの色が変わるのだろう。ダンゴムシは家の周りでよく見かけるので、日光が特に関係していると思う。
 さらに、動き回るスペースが少ないから、土の中にもぐって運動しているのだ。そのため、土がやわらかくなり、糞(ふん)と混ざって黒っぽくなるのだと思う。ミミズや微(び)生物も黒くてフカフカな土にするというから、ダンゴムシもワラジムシも、豊かな土づくりをしていると思う。

【実験1】甲らの色はどんな場合に変化するかを調べる

(1)5つの場合=運動させる(毎日1時間、50㎝のコースを行き来させる)運動させない(何もしないで飼うだけ)餌(えさ)にカルシウム(コンクリート・シジミの貝殻・卵の殻・イカの甲)を与える一日中暗闇ですごさせる日光浴をさせる(ただし夏場は木陰に置く)=で飼育し、甲らの変化を観察する。

《方法》

5つの飼育ケース(縦14㎝×横22㎝×高さ16㎝)それぞれに土、葉、石を入れ、ダンゴムシとワラジムシ各5匹をそれぞれのケースに入れて4週間飼育した。色の変化は1週間ごとに「グレースケール」と比べて判定した。各5匹の甲らにペイントマーカー(白・黄・赤・緑・青)で印をつけて区別した。顕微鏡で甲らを観察した。(2)各飼育ケースの土の変化を観察した。

《分かったこと》

ダンゴムシもワラジムシも、運動やカルシウム、日光が不足すると、甲らの色が薄くなる。運動をさせ過ぎても、甲らは茶色系に薄くなった。濃い色のまま、ほとんど変化しなかったのはカルシウムを与えた場合だった。
甲らの色だけでなくツヤや厚さ、足の色、踏ん張る力、動きの素早さなども変化した。
運動しないとダンゴムシは1カ月も脱皮せず、体が小さいままで、甲らの色は薄くツヤがなくなり、動きが鈍くなった。ワラジムシは体の幅がせまいままで、甲らの色も薄くなるが、ツヤや素早さは良いままだった。ふだんよく動き回るダンゴムシは運動が必要だけど、じっとしていることが多いワラジムシは、運動が少なくても、甲らの色以外には体に影響が少ないことが分かった。
運動をさせすぎると、ダンゴムシもワラジムシも、甲らの色が薄くなり、茶色系になり、ツヤもなくなることが分かった。ダンゴムシは、茶色と灰色のまだら模様になった。
カルシウムは、ダンゴムシもワラジムシもともに大切で、甲らの色やツヤ、厚さ、体の大きさ、足の速さ、ふんばる力など、たくましさをつけるためのものだった。特に動き回ることの多いダンゴムシは、効果が大きかった。ふだんよくコンクリートに上ってかじっているのは、カルシウムを食べていたからだ。
ずっと暗闇にいると、特にワラジムシの甲らが一番、グレースケールで4段階も薄くなった。それも縁まわりが先にどんどん薄くなり、透けて見えるようになった。ダンゴムシもワラジムシも足が白く細くなり、ふんばる力も弱くなった。さらにダンゴムシは2週間目、ワラジムシは4週間目から次々、突然死んでしまった。でも死がいが1つもなかったので、共食いが起きてしまったのだ。やはり光も必要だ。
ダンゴムシとワラジムシは、体のつくりやふだんの生活に違いがあるので、影響を受ける条件も違う。
甲らの色が薄くなるのは、甲らの細胞の色が抜けてくるからだ。黒っぽい灰色が抜けたら、その下地は茶色系だった。まだら模様に見えるのは、1つ1つの細胞が別々の速さで色が抜けたためだ。
色が薄くなるということは、同時に甲らの厚さも薄くなる、ツヤもなくなる、足も白く細くなり、体も弱っていくということだ。
体を丈夫にして生きていくためには、カルシウムも運動も光も、ダンゴムシとワラジムシの体と生活に合うような適度な量が必要だ。

〈土について〉

カルシウムたっぷりで元気のよいダンゴムシとワラジムシのいた土が、一番黒っぽくフワフワになり、葉の切れはしや糞が多く積もって、豊かな土づくりをしていた。カルシウム、運動、光は土づくりにも影響していた。

【実験2】土にいる生き物によって、食材が分解される様子を観察する

分解するしくみ図

《方法》

 ダンゴムシ(10匹)、ワラジムシ(10匹)、ミミズ(10匹)、ボカシ肥(光合成細菌・乳酸菌・酵母菌などの微生物)それぞれを入れた土と畑の土に、食材(軟らかいモミジの葉・少し硬いアジサイの葉・キャベツ・トマト・キュウリ・煮干し)の下半分を埋めて変化をみた。

《分かったこと》

 ダンゴムシとワラジムシによる土と、「土を豊かにする」と言われるミミズ、ボカシ肥、畑の土と比べてみたが、条件が良くなかったので食材が腐(くさ)ったりウジがわいたりして、結果は分からず、ダンゴムシとワラジムシが弱ったり、ミミズが死んだりした。しかしボカシ肥の微生物は、そんな悪い条件でもちゃんと食材を分解し、フカフカの良い土づくりをした。畑の土もウジはわいたが、分解していた。土の中の微生物が働いていると言える。

【実験3】土がない状態で、生き物に食材が分解される様子を観察する

《方法》

土の代わりに、水で湿らせたキッチンペーパーの上に、水分が少なく、腐りにくい食材(モミジの葉・アサガオの葉・かつお節)を置く。暑さに弱いミミズは使わず、ケースにダンゴムシ10匹、ケースにワラジムシ10匹、ケースにダンゴムシとワラジムシ各5匹とボカシ肥の善玉菌の微生物の液、ケースには善玉菌の微生物の液だけを入れる。食材が分解される様子と糞が積もる様子を観察した。

《分かったこと》

食材の分解は、土ありの実験2よりも、かなり遅かった。このことからも「畑の土には微生物がたくさんいて分解をしている」と言える。
ダンゴムシとワラジムシ、微生物を一緒に入れたケースでは、糞がほとんど残っておらず、スカスカに風化している糞も見つけた。ダンゴムシだけ、ワラジムシだけのケースでは、どちらも糞は1カ月もそのままの形で残っていた。微生物が糞を分解していたのだと分かった。
微生物が葉を、葉の状態から分解するよりも、ダンゴムシとワラジムシが食べて糞にしたものから分解する方が早い。
ワラジムシは葉をトロトロに溶かしてから、引きちぎるようにして食べる。糞の中には葉や葉脈の切れはしがない。ダンゴムシは葉をただかじるだけで、糞には枝や葉のかけらがそのまま出てくる。ワラジムシには食材を分解する(溶かす)力があるが、ダンゴムシにはない。
ワラジムシだけのケースでは、土あり実験ではカビやウジがわきにくかった。土なし実験では、いやなにおいがせず、微生物のケースと同じようにシートが茶色く染まった。ダンゴムシだけのケースは、シートが茶色に染まらず、カビやウジ、においがひどかった。ワラジムシには腐れを予防する力があるのかもしれない。
ダンゴムシとワラジムシ、微生物では、それぞれ食材の分解の仕方が違う。分解する速さは、1カ月くらいで、ほとんど同じだった。
ダンゴムシとワラジムシが食材を食べて糞を出し、それを微生物が分解して豊かな土をつくるといった仕組み、流れを見ることができた。
ダンゴムシやワラジムシ、微生物などが土と良い関わり合いをもち、お互いを元気にしていることが分かった。

感想と反省

 甲らの色が薄くなる仕組みを、顕微鏡で発見し感激した。適切なものさし(グレースケール)で、色の変化を定期的に記録していくと、判断しやすいことが分かった。しかし測定のために、動き回るダンゴムシやワラジムシを取り出して、じっとさせるのに時間がかかり、50 匹を1日中かかってやるのは大変だった。1匹ずつマーカーで印をつけたが、脱皮して消えてしまったのは予想外だった。夏の暑さでダンゴムシやワラジムシ、ミミズが死んでしまい、申し訳なかった。実験は先を見通し、いろいろな場面を考えて進めなければならない。「生き物や土はみんなつながっているのだ」と、うれしくなった。

指導について

指導について片岡 美佐子

 ダンゴムシとワラジムシの共通点と相違点を対比しながら研究し続けて4年間、いろんなハプニングやエピソードとともに多数の発見をしてきました。今回は、飼っているうちに甲羅の色が薄くなってきたように感じていたことと、土の色が濃くなってきた感じがすることの、実態調査と原因解明をしました。ダンゴムシもワラジムシも生きており、実験が制約されるジレンマ、色の変化をどう表すか? どう記録するか? 亡くなったりカビやウジがわいた責任等々、悪戦苦闘の連続でした。その結果、甲羅はもちろん体中の各部分がすごい変化! 土の色も質もすごい変化! それらに関連性! 顕微鏡で甲羅の各細胞の色が別々に抜けていくことを発見! その度に「お~っ!」と歓声。生き物の状態の変化をいかに客観的に表すか、データをいかにまとめるか、またダンゴムシやワラジムシ以外の生き物や生態系の循環にまで自分で発想を広げていったことに、子どもらしいキラキラした科学する芽をたくましく感じました。

審査評

審査評[審査員] 大林 延夫

 ダンゴムシとワラジムシは、ともに身近に見られる外来種です。小学1 年生から飼い続けている片岡君には、両者の似ている所と違っている所が気になっています。4 年生になった今回は、それぞれについて、飼っているうちに色が薄くなるのは何故か知るために、餌と運動と光について調べました。また、分解者としての役割をミミズや微生物と比べています。知りたい事がたくさんあって、比べる対象が複雑になったために少し欲張った研究になったようですが、自分なりにきちんと結論を見つけ出すことができました。観察の中から疑問を見つけたとき、答えを見つける方法を考える事が出来れば研究の半分はでき上がったようなものです。でも、終わってみるとまた新しい疑問が増えてしまいます。実験の方法も改良しなくてはいけない事に気が付きます。片岡君には、これからも引き続いて研究を続けて行ってくれる事を期待します。

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