第62回入賞作品 小学校の部
秋山仁特別賞

よく飛ぶストロー飛行機を作ろう!調べよう!6年目

秋山仁特別賞

山形県酒田市立鳥海小学校 6年
池田 蒼空・池田 澪央
  • 山形県酒田市立鳥海小学校 6年
    池田 蒼空・池田 澪央
  • 第62回入賞作品
    小学校の部
    秋山仁特別賞

    秋山仁特別賞

研究の動機と前回まで

 小学1年生の時、ストローの両側にリング状の羽根を付けただけのストロー飛行機がよく飛んでいることに興味を持ち、この研究を始めた。1年目は基本のストロー飛行機を作って飛ばし、10回の平均で3.16mの飛行に成功した。2年目からは前後の羽根のバランスを変えたり、羽根の素材をさまざま変えて試したりして研究を重ね、4年目には100回平均で9.20m飛ぶようになった。前回の研究では実験の精度を上げるために発射台を製作し、高さ、角度、動力の強さの条件を固定させることに成功した。さらにストロー3本の飛行機が安定して飛ぶことも突き止め、製作した発射台1号機を使った30回平均で16.35m飛ばすことができた。

今回の研究内容

 前回、青森県立三沢航空科学館で、よく飛ぶストロー飛行機には揚力(浮く力)と推進力(前へ進む力)のバランスが必要だと教えていただいた。今回は、ストロー飛行機の揚力と推進力が、飛び方にどう影響を与えるのか、研究したいと思った。
 そのためには、より性能が高い発射台が必要だった。1号機は初速平均40km/h台を安定して出すことができる。しかしそれ以上を出そうとすると、数回でゴムが切れてしまう。そこで、初速平均60km/h台が安定して出せる発射台2号機を作製した。①土台を1号機より長く作ってゴムを引ける距離を延ばしたこと、②三脚2台で土台を支えたことが、1号機との大きな違いだ。


今回作成した発射台2号機

実験1~2

基本の実験1

 ストロー飛行機に揚力が本当にあるのかどうかを確かめるため、実験を行うことにした。実験に使うのは、重さ5.5gのストロー3本の飛行機だ。ストロー飛行機と比較するため、同じ5.5gのストローロケットも用意した。ストローロケットは1本のストローの端にテープを巻きつけて重さ5.5gにしたもので、羽根はないが発射台から発射することができる。そして今回はすべての実験を動画撮影し、飛行軌道や落下までの秒数を検証した。

 実験1ではまず、ストロー飛行機とストローロケットを両手に持ち、発射台と同じ高さ1.4mから同時に落下させた。床に落ちるまでの時間を10回くり返して計測した結果、どちらも10回すべて0.60秒だった。
 この結果から、ストロー飛行機本体には揚力がないことがわかる。
 ストロー飛行機本体に揚力はないのだから、飛ばすことで揚力が発生するという仮説を立てた。この仮説を検証するため、ストロー飛行機とストローロケットに同条件で推進力を加えて飛ばすことにした。ストロー飛行機の飛距離がストローロケットよりも長ければ、ストロー飛行機に揚力が発生することが証明できる。
 発射台1号機を使用して、角度0度、高さ1.4m、初速平均33.87~34.93km/hでストロー飛行機とストローロケットをそれぞれ30回ずつ飛ばしてみた。30回の平均値が、下の表だ。

 ストローロケットは上昇するような飛び方ではなく、発射後、少しずつ落下していった。発射台で推進力を加えても、落下させた時と同じ0.60秒で落下、発射後から落下するまでの速度はほとんど変わらない。
 ストロー飛行機は発射後、少し下降し、その後2mくらいの高さまでゆるやかに上昇してから落下した。推進力を加えずに落下させた時の0.60秒より長時間飛行し、発射から落下まで速度が少しずつ遅くなっていた。推進力を加えることでストロー飛行機はよく飛んでいるが、ストローロケットはあまり飛ばなかった。以上の結果、発射台から発射して推進力を加えたことで、ストロー飛行機が揚力を得たことが証明できた。

推進力を変えて調べる実験2

 揚力が推進力によって生まれるなら、より遠くに飛ばすには推進力がカギになるのではないか。発射台のゴムの張り方を変えることで推進力が変えられるので、角度0度、高さ1.4mは固定して、初速平均20km/h台の「ゴムゆるめ」と、実験1でも使用した基準となる初速平均30km/台の「ゴム普通」、さらに発射台2号機でゴムを強く張った初速平均50km/hの「ゴム強め①」、発射台2号機で最も強くゴムを張った初速平均60km/h台「ゴム強め②」の4パターンで、ストロー飛行機とストローロケットを飛ばす実験を行った。全パターンでストロー飛行機、ストローロケットの飛行をそれぞれ30回ずつ試し、出した平均値が下の表だ。

 実験でのストローロケットの飛び方は、次のようなものだった。

 ストローロケットはゴムを張るほど遠くへは飛ぶが、上昇するような飛び方ではなく、必ず発射台から少しずつ落下していく。単に落下させた時とほぼ同じ0.60~0.70秒で落ち、揚力は働いていない。発射から落下するまでの速度はほとんど変わらなかった。
 続いてストロー飛行機の飛び方は、次のとおり。

 ストロー飛行機はゴムゆるめの場合、発射後に少し下降し、その後やや水平に飛んでから落下した。ゴム普通は発射後に少し下降し、その後2mくらいの高さまでゆるやかに上昇して落下した。ゴム強め①は発射後水平に飛行し、その後3mくらいの高さまで急上昇して落下した。ゴム強め②は発射後に急下降したがその後3.5mほどの高さまで急上昇し、落下した。ゴム強め②の急下降は初速に羽根が耐えられず、変形した可能性が考えられる。

研究のまとめ

 ストロー飛行機は推進力を得ることで揚力を働かせ、上昇する力を得ていた。推進力が大きくなり、揚力が地球の重力を上回るとストロー飛行機は上昇を続ける。ジェット機が離陸する時と同じ状態だ。推進力が一定で揚力と重力がつり合った状態の時、ストロー飛行機は上昇も下降もせずに高度を維持する。ジェット機の水平飛行と同じ状態だ。推進力が小さくなり、揚力が重力を下回った時、ストロー飛行機は下降して落下する。ジェット機が着陸する時と同じ状態だ。ストロー飛行機がより長い距離を飛ぶためには、揚力と重力がつり合った状態を長く保つ必要がある。6年目の研究となった今回、ストロー飛行機の30回平均飛距離は最長の19.70mとなった。

指導について

池田 佑子

 小学校1年生の時に科学館で見たストローの両端にリング状の羽根を付けた機体。なぜこの形状の機体が飛ぶのか、と疑問を持ち、親子で研究に取り組んできました。6年継続し研究していますが、謎は深まるばかりで毎年夏休みの研究を終える度に新たな疑問が湧いてきます。
 理数系が得意ではない私は、子供たちと一緒に考え、一緒に学び、家族のコミュニケーションの一環として楽しく研究を続けられたことを嬉しく思います。研究を続ける中で父と発射台の製作を行ったり、エクセルで表計算を用い平均値を出したり、動画編集ソフトから飛行軌道の描写や落下までの秒数を求めたりと、新しいことにどんどんチャレンジし大きく成長した2人の姿をとても頼もしく感じました。
 この度このような素晴らしい賞を頂けたことは、2人にとってとても貴重な経験となり、今後の糧となることと思います。研究を応援しサポートして下さった先生方始めご指導いただいた皆様に感謝申し上げます。

審査評

[審査員] 秋山 仁

 ストロー飛行機とは、ストローの両側にリング状の羽根をつけたものである。簡単な装置にも拘わらず、これがとてもよく飛ぶことに関心を抱き、何年間にもわたり、このテーマ一本に絞って研究をしてきた結果についての作品です。羽根の素材、前後のバランス、条件を固定するための発射台の製作などについては前年に研究しています。今回は、揚力、推進力に注目して実験を繰り返し、飛行距離の測定にとどまらず、動画を撮影して飛行軌道なども調べています。
 6年間の研究の結果、当初3m位しか飛ばなかったストロー飛行機が今では20m近くも飛ぶようになりました。どんな研究でも熱意をもって継続してこそ良い結果にたどり着くものです。本作品はその典型だと思います。

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