第62回入賞作品 中学校の部
1等賞

お米の美味しさ大研究 パートⅤ ~米麴の秘密にせまる~

1等賞

島根県島根大学教育学部附属義務教育学校 7年
島根県島根大学教育学部附属義務教育学校 7年
籠橋 真紘
  • 島根県島根大学教育学部附属義務教育学校 7年
    籠橋 真紘
  • 第62回入賞作品
    中学校の部
    1等賞

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研究の動機

 小学3年生からお米の美味しさについて研究している。ある時、家にあったいつもと違う味噌に興味を持ち、インターネットで調べると、味噌には米麴というものが使われていることがわかった。米麴は味噌の他にも、醬油や甘酒などにも使われる身近なものだった。
 また、米麴は米に麴かび(以下麴菌という)を生えさせたもので、人間に害をもたらすと思っていたかびを有効に活用した食品だと知って驚いた。麴菌にはさまざまな種類があり、一般的に米麴に使われるのは加熱した穀類に生えやすいアスペルギルス・オリゼーだと知った。
 さらに調べると、麴菌は見たこともない不思議な形をしていた。本当にそんな形のかびが米に生えるのかと信じられず、実際に見たいと思った。また、米麴を一から作り、その米麴で美味しい甘酒を作る方法を探ってみることにした。


米麹表面のアスペルギルス・オリゼー

予備実験と本実験

予備実験(2021年3〜7月)

 家庭で米麴がうまくできるかを確かめ、よりよい作り方や観察方法を選ぶために予備実験を行った。その結果、家庭で作っても米に麴菌がしっかり生えることがわかった。この研究では島根県立大学と米子市児童文化センターから2台の走査型電子顕微鏡をお借りしたが、その電子顕微鏡で観察すると麴菌の菌糸や胞子をはっきりと確認できる。ところが、その米麴で甘酒を作ったところ、苦くなった。米麴に雑菌が混ざり、増殖してしまったことが原因だと思われた。
 予備実験での反省から、本実験では方法をいくつか改善させた。思った以上に時間がかかった米の水切りのために、水切り用のざるを増やし、特に乾きにくい時はドライヤーを使った。雑菌がつかないように、米麴を扱う時は手袋を使った。甘酒を作る時は比較のため、市販の米麴AとBでも同じように試作した。予備実験では甘酒を平均温度35℃で20時間保温(以下、35℃/20時間という)して作った。低温で長時間かけて作ると雑菌が増えやすいと考えて、高温かつ短い時間で保温する方法も試すことにした。本実験では35℃/20時間に加え、平均温度55℃で5時間保温(以下、55℃/5時間という)する方法も試した。

本実験(2021年7〜8月)で米麴を自作する

 実験の前にはアルコールで手を消毒し、米麴をさわる時は手袋と三角巾を着用した。米麴の研究期間中は納豆やヨーグルトなど納豆菌や乳酸菌を含む食品を控え、実験器具は洗浄、殺菌を徹底した。
 米麴の材料は無洗米(島根県産うるち米)と、種麴アスペルギルス・オリゼー(麴菌・糀屋三左衛門)を用意した。米麴を作る方法は、次のとおりだ。

米300gを600gの水に5時間浸す。
米の表面が乾く程度に、2つのざるで4時間水を切る(天候によってはドライヤーを使い同程度に乾かした)。
米をふきんに包んで金属製の蒸し器に入れ、芯が残らない硬さになるまで強火で40~45分間蒸す。
蒸し上がった米を手で広げ、36℃くらいまで冷めたら種麴1.2gをまぶし、均一につくように米をかき混ぜる(種きり)。
④を発泡スチロールの箱に入れ、最初は30~32℃になるようにする。次第に温度が上がる(麴菌が熱を出す)ため、35~43℃を保つように培養する。温度が上がり過ぎたら保冷剤を入れたり、手で素早く米をならしたりして調節した。
種切り直後の米麴(米麴0時間)、45時間培養した後の米麴(米麴45時間)、90時間培養した米麴(米麴90時間)の3種類の米麴で、観察や甘酒作りを行った。

5種の米麴の観察

 自作した3種類の米麴と市販のAとBの米麴を、それぞれ肉眼と走査型電子顕微鏡で観察した。電子顕微鏡での観察では米麴をカッターで切り、横断面も比較した。
 3人の実食による「見た目(麴菌の量)」「香り」「のどごし」「風味」「後味」「甘さ」「総合評価」の官能評価も行った。5点満点で個人と平均の評価を計算した。

10種類の甘酒を作る

自作3種類と市販ABの米麴で、35℃/20時間と55℃/5時間の甘酒をそれぞれ作った。方法は次のとおりだ。

5種類の米麴を1種類ずつ別のプラスチックパックに入れ、それぞれ50~60℃の湯を加える。
35℃/20時間の場合は①を発泡スチロールの箱に入れ、同じ箱に60~70℃の湯を入れたペットボトルを置き、蓋をして保温する。55℃/5時間の場合は①を入れた発泡スチロールの箱に直接50~60℃の湯を注ぎ、蓋をして保温する。

 完成した10種類の甘酒の糖度とpH値を測定した。米麴と同じように3人が実食し、「見た目(麴菌の量)」「香り」「のどごし」「風味」「後味」「甘さ」「総合評価」で官能評価を行った。味に差があるため7点満点とし、ここでも個人と平均の評価を計算した。

本研究の結果

 電子顕微鏡で米麴を観察すると、米麴0時間にはアスペルギルス・オリゼーの菌糸や胞子は見られなかったが、米麴45時間の表面には麴菌の菌糸や胞子がびっしり生えていた。米麴90時間では麴菌の特徴的な形がより多く見られ、菌糸や胞子もより増えて表面にびっしり見られた。市販の米麴Aは米麴45時間に、市販の米麴Bは米麴90時間に似た状態だった。横断面を見ると、最も内部まで菌糸が入り込んでいるのは米麴45時間と市販の米麴Aだった。菌糸が入り込んでいるところでは、米のデンプンが分解されている様子が見られた。
 米麴の官能評価は市販A、市販B、米麴90時間の点が高く、次に米麴45時間、米麴0時間は点が低かった。
 甘酒の糖度は米麴0時間以外、35℃/20時間より55℃/5時間のほうが高くなる傾向が見られた。pH値の調査では、培養時間が長い米麴ほど酸味が出ること、55℃/5時間のほうが酸味が出づらいことがわかった。
 甘酒の官能評価の結果は、下表のとおりだ。

 表の数値は3人の平均値で、上の白地が35℃/20時間、下の黄地が55℃/5時間の評価だ。

結論と感想

 しっかりと米に麴菌が生え、米の内部まで入り込んでいる米麴は糖度やpH値が高く、美味しい甘酒を作り出すことがわかった。35℃/20時間より55℃/5時間の米麴のほうが、美味しい甘酒になることもわかった。麴菌がびっしり生えていた米麴90時間の評価がいまひとつだった原因は、米表面に残った水分や、混入した雑菌が考えられる。家庭で米麴を作るには水分や雑菌の管理を厳しく行うことが重要で、今後の課題だ。
 また、今回の研究では1種類のうるち米で米麴を作ったが、もち米やインディカ米など、違う種類の米で作るとどうなるのかを調べてみたい。

指導について

籠橋有紀子

 小学校3年生のある朝に娘が発した、「今日のお米の味はいつもと違うね」という一言から始まった一連の研究のパートVが今回の受賞研究となりました。米の品種によって形や味、食感が違うこと、保存食を作るための条件が違うなど、自由研究を通して普段食べているお米の一粒一粒がそれぞれ個性を持つ無限大の可能性を秘めた食物であることを知り、興味が深まっていきました。研究の原動力は、「知りたい」という思いにあり、知るためには、地道な努力を継続することに尽きます。パートⅣまでの研究と違い、麴菌を増やすには、温度や時間など環境のコントロールが不可欠であるため、昼夜を問わず作業をするなど試練の連続でした。しかし、決して諦めず、肉眼や実体顕微鏡で観察出来ない麴菌の姿を電子顕微鏡で確認し、米麴での働きを発見することが出来ました。ご協力いただいた米子市児童文化センター、公立大学法人島根県立大学に心よりお礼申し上げます。

審査評

[審査員] 木部 剛

 日常生活の中でお米の美味しさに興味をもち、小学校3年生から続けている5年目の研究です。今年は米麴に注目しました。まず、研究の到達点として美味しい甘酒を作ることを掲げました。予備実験で米麴がうまく作れるかを試してから、生じた問題点を考慮し、本実験の計画を立てて実施しました。種麴を用いて作製した米麴を肉眼だけでなく電子顕微鏡でも観察しました。光学顕微鏡で米麴の表面や断面の特徴をつかむのは難しく、電子顕微鏡を使用できたことは恵まれた研究環境だったと思います。甘酒作りは、自作の米麴と市販の米麴を用い、温度や時間の条件を変えて行いました。その結果から、糖度や酸味のバランスが「美味しさ」につながることが考察できました。そのバランスをもたらす米麴の温度条件や、甘酒を作る際の温度や時間の条件についても見出しました。探究の過程を踏みながら「美味しい甘酒」に近付いた研究です。今後の展開が楽しみです。

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