第55回入賞作品 小学校の部
継続研究奨励賞

アゲハチョウはレモン好き? その五

継続研究奨励賞

千葉県松戸市立北部小学校5年
高木輝
  • 千葉県松戸市立北部小学校5年
    高木輝
  • 第55回入賞作品
    小学校の部
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研究の動機

 小学1年のときから、アゲハチョウの幼虫はレモンとサンショウの葉のどちらが好きなのか、観察してきた。どうやらサンショウの葉が好きらしいことが分かってきたが、本当にそうなのか確認しようと思った。

これまでの研究

 幼稚園のとき、育てているアゲハチョウの幼虫がレモンの葉ばかりを食べ、サンショウの葉を残すので、アゲハチョウの幼虫は「レモンが好きなのか」と思った。
 小学1年のときに、幼虫を2つのグループに分け、それぞれレモンの葉、サンショウの葉をエサに育てた。レモンの葉の幼虫の方が早く成長したので、「レモン好きだ」と思った。
 小学2年のときは、幼虫を次の4つのグループに分けた。
ふ化した幼虫をサナギになるまで、サンショウの葉だけで育てる。
ふ化してからサンショウの葉で育て、アオムシ(5齢幼虫)になったらレモンの葉に変えてサナギになるまで育てる。
ふ化からサナギまでレモンの葉で育てる。
ふ化したらレモンの葉で育て、アオムシになったらサンショウの葉に変えてサナギになるまで育てる。
 その結果、のグループ(サンショウ→レモン)の幼虫は死んでしまった。
 小学3年のときは、幼虫にどちらか好きな葉を選んでもらおうとしたが、サンショウとレモンの両方の葉を食べてしまい、どちらが好きか分からなかった。
 小学4年のときは、これまでの実験をすべてやり直した。小学2年のときに幼虫が死んだグループ(サンショウ→レモン)の方法については、レモンの葉をやわらかいものにしたら、うまく育てられた。レモンの葉を多く食べた幼虫よりも、サンショウの葉を多く食べた幼虫の方がゆっくり成長したが、どちらが好きかは分からない。ただし、レモンの葉を多く食べた幼虫が早く成長するようなので、「レモンの葉に秘密があるのではないか」と、新しい疑問がわいた。

研究のめあて

 小学1~4年の研究で、アゲハチョウの幼虫は、サンショウの葉よりも、レモンの葉を食べた方が早く成長することが分かった。でも、その理由は分からない。幼虫が食べたそれぞれの葉の量を調べれば、その理由が分かるかもしれない。また、4年のときに思った「レモンの葉の秘密」「幼虫の秘密」を知りたい。早く成長できるレモンよりも、幼虫はサンショウの方が好きなことも確かめたい。

研究1:幼虫は、サンショウとレモンのどちらの葉を多く食べるか

【実験1】

アオムシになってからサナギになるまでに食べた葉の量をはかる。
「アオムシになってから」としたのは、その前の幼虫が小さいときは、食べる量が少なく、軽すぎてはかれないからだ。しかも、それまでの成長が幼虫によって早くても遅くても、条件が同じになる。さらに、採集した幼虫の多くが、ふ化して何日目になるのかわからないため、「アオムシになってから」とすれば、同じように比べられるからだ。

《方法》

アオムシに、サンショウの葉だけを食べさせる(24匹)。レモンの葉だけを食べさせる(29匹)。サンショウの葉とレモンの葉を食べさせる(22匹)。飼育ケースに入れた葉の量、食べた量、サナギになるまでの日数などを、毎日夕方5時ごろに記録する。

《結果》

幼虫1匹の食べた量、アオムシだった日数(いずれも平均値)は
(サンショウ):7.39g、9.46日
(レモン):6.99g、7.14日
(サンショウ・レモン):合計7.39g(サンショウ3.54g、レモン3.85g)、7.36日。
 食べた量はで、ほとんど同じだった。では、アオムシだった日数はサンショウが長く、レモンは短い。で、入れた葉の量(1匹平均でサンショウ4.92g、レモン6.78g)に対する食べた葉の量(食べっぷり)を計算すると、サンショウは72.0%、レモンは56.8%。レモンよりも、サンショウを多く食べたことになる。

《考察》

食べた量が同じなのに、レモンを多く食べたアオムシの方が早く成長(サナギになることが)できるのは、サナギになるために必要な葉の量が決まっていて、レモンの葉をより早く食べられるからではないか。食べっぷりをみると、レモンよりサンショウの方が好きなようだ。

研究2:サンショウとレモンの葉の秘密、幼虫の秘密

 速く食べられるのは、幼虫の「あご」がしっかりしているからで、葉の厚さも食べやすさに関係しているのかもしれない。

【実験】

卵からふ化した幼虫を、サンショウの葉だけ、レモンの葉だけで育て、それぞれがアオムシになったときに、あごの大きさ(長さ)を測り、比べる。サンショウとレモンの葉(ふつうのもの・やわらかいもの)の厚さを測る。

《方法》

あごの大きさは、カメラのレンズの前に定規を当て、透明な容器のふたの上にのせたアオムシを下側から写真にとる。プリントアウトした写真上でのあごの大きさを測る。定規の目盛り1cm(10mm)が写真上では何mmかを測り、その比率から、実際のあごの大きさを計算する。葉の厚さも、それぞれ10枚重ねたものを写真に撮り、同様に定規目盛りの写真上の比率から、10枚分の厚さ、さらに1枚の厚さを求める。

《結果》

サンショウの葉だけで育てたアオムシ(10匹)のあごは平均0.68mm、レモンの葉で育てたアオムシ(8匹)のあごは平均1.24mmだった。サンショウの葉1枚の厚さは平均0.13mm、レモンの葉(ふつう)1枚の厚さは平均0.29mm、やわらかい葉1枚の厚さは平均0.21mmだった。

《考察》

サンショウの葉の方がうすく、これだけを食べたアオムシはあごが小さい。レモンの葉(ふつう)はサンショウの葉よりも厚く、アオムシのあごが大きくなった。あごの大きな、レモン育ちの方が、短い日数で、必要な量の葉を食べられるようだ。

研究のまとめ

 小学2年の実験で、サンショウ→レモンの幼虫が死んだのも、アオムシになってサンショウからレモンの葉に変えたときに、あごが小さいために厚いレモンの葉を食べられなかったからだ。小学4年の実験では、やわらかいレモンの葉を食べさせたから、死なないで育ったのだ。うすいサンショウの葉よりも、厚いレモンの方が、一度に多く食べられ、幼虫が成長するのに必要な量を速く食べられる。でも幼虫は、レモンの葉よりも、やわらかなサンショウの葉を残さず食べる。アゲハチョウの幼虫は「サンショウ好き」と分かった。

感想

 毎年のことだが、エサ集めが大変だった。サンショウの葉がもっとあれば、幼虫1匹ずつ分けて育てられたし、レモンの葉と同じ量を飼育ケースに入れられた。そうすれば、もっと細かい(正確な)データを出せたと思う。今度はカラタチなど、他の葉でも試してみたい。

指導について

指導について高木 美和

 「えーまだあるのー(涙)」。記録をまとめるために書かねばならない字の多さに泣いた息子。字を書くことも大変だった1年生の夏休みに始めたアゲハチョウの研究でしたが、その作品は本当に汗と涙の結晶でした。それから毎年、新たに湧いた「なぜ?」「本当?」に、息子なりの答えを探すためにやってきました。毎年同じ研究を続けること、毎日同じ作業を続けることは、難しい時もありました。今回いただけた賞は、まさに「継続は力なり」の結果だと思います。5年間、見守ってくださった学校の先生方、自由研究のライバルたち、声援を寄せてくれた友人や知人、毎年エサ集めに協力してくれる祖父母、そして審査の先生方、多くの方々のおかげでいただけた賞だと、この場をお借りしてお礼申し上げます。今回の受賞は息子の自信と励みになったことでしょう。これからもいろいろなことに挑戦し探究していくであろう息子を、家族みんなで応援していくつもりです。

審査評

審査評[審査員] 友国 雅章

 幼稚園児の時に飼っていたアゲハチョウの幼虫が、サンショウよりレモンの葉をたくさん食べることに気づいたことがこの研究の始まりです。以来、アゲハチョウの幼虫は本当に「レモン好き」なのかを確かめるため、5年をかけて実験と観察を続けてきました。その結果、アゲハチョウの幼虫がサナギになるまでに食べる葉の量は、サンショウでもレモンでもほとんど差がないが、葉の厚いレモンの方が薄いサンショウより成長に必要な量を速く食べることができるので、成長がより早いことや、レモンの葉を食べて育った幼虫の大あごはサンショウを食べて育った幼虫の大あごより大きいことなど、興味深い発見がありました。
 自然観察では、うっかりすると見逃してしまいそうなちょっとした「はてな?」に気がつくかどうかがとても大切です。そして、その「はてな?」を粘り強く追い続けることが、これまで誰もできなかった重要な発見につながった例は過去にいくつもあります。これからもこのような「はてな?」を大切に研究を続けて下さい。

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