第54回入賞作品 中学校の部
1等賞

鉱物結晶における多様性の研究
オイラーの多面体定理は鉱物結晶に適用できるのか

1等賞

静岡県浜松市立曳馬中学校2年
山田蓮
  • 静岡県浜松市立曳馬中学校2年
    山田蓮
  • 第54回入賞作品
    中学校の部
    1等賞

    1等賞

研究の動機

 小学2年生の時、天竜川の岩石の標本を作って以来、60種類の鉱物を採集してきた。中学1年の数学で『オイラーの多面体の定理』を知った。「多面体の辺の数は、頂点の数と面の数を足して2を引いた数に等しい」という。鉱物の結晶にも適用できるのか、多面体の特徴や関係性について研究し、定理との関係を探る。

鉱物標本の分類と観察

◇ガーネットにおける多面体

 ガーネット(ザクロ石)は長野県和田峠の「満ばんザクロ石」、愛知県田口鉱山の「スペサルチン」、岐阜県洞戸鉱山の「灰ばんザクロ石」を採集した。満ばんザクロ石(9点)は1つの四角形を四角形や五角形、六角形が取り囲む構造だ。「スペサルチン」(1点)は18面体だ。

◇水晶における多面体

 山梨県の塩山・竹森、長野県和田峠付近、岐阜県ちんの峠、愛知県延坂、吉村、振草で採集した水晶標本33点を分類した。六角柱状の結晶のほか変形水晶や板状水晶、平行連晶、成長の回転方向が異なる左水晶・右水晶などがある。

◇黄鉄鉱における多面体

 長野県和田で採集した黄鉄鉱5点、愛知県振草の6点を観察した。結晶面に三角形や四角形、五角形などが見られる。隣接面として長野県産は三角形、愛知県産は正三角形や正四角形などの“正○角形”を含む組み合わせが多い。多面体の頂点が“欠けた”結晶も見られる。

《仮説》

結晶は成長する。「立方体が完全形(最終形態)」とすると、標本に見られる“頂点の欠けた結晶形”はその手前の状態だ。さらにその前の結晶形も存在するはずだ。

【実験1】仮説の検証

 結晶としての立方体(正六面体)は、8つの頂点が欠けてできた正三角形(角を切り落とした時の切り口)がそれぞれ、結晶の成長とともに小さくなり、各頂点となったものだ。逆に、各頂点の切り口(正三角形)を大きくしながら、前段階の結晶形を追究する。

《方法》

立方体のスチロール(5㎝×5㎝×5㎝)の8角(頂点)を、各辺の1/4、2/4、3/4、4/4の位置を結んだ線で切り取る(切頂)。できた立体の辺や頂点、面の数などを調べる。体積や表面積もできる限り計算する。

《結果》

 右から元の「立方体」、辺の長さ1/4、2/4、3/4、4/4でそれぞれ切り取った「切頂立方体」「立方八面体」「切頂八面体」「正八面体」。

 上の写真の各立体の面が、左の立体になるにつれて縮小し、最後の正八面体では点(頂点)になっている(面から点に変化している)ことが分かる。

《分かったこと》

●立方体と正八面体では、辺の数は同じ12だが、頂点の数と面の数が入れ替わっている。これは、立方体の“面の中心”を通る線で切ったのが正八面体であり、立方体の面の数は正八面体では頂点の数、立方体の頂点の数は正八面体の面の数となるからだ。
●切頂立方体と切頂八面体は、辺・頂点・面の数が同じだ。
●立方八面体の辺・頂点の数は、切頂立方体と切頂八面体よりもそれぞれ12少ない。これは、切頂によってできた正三角形が、立方八面体になって互いに接し、頂点が重複したほか、元の立方体の辺が消滅したからだ。
●切頂八面体の体積は、立方体の体積の1/2だ。
●正八面体の体積は、立方体の体積の1/6だ。(上の表では計算誤差がある)
●立方八面体を作る時に切り取った8つのパーツ(三角錐)を組み合わせると正八面体になる。表の正八面体と同じ体積だ。ならば、正八面体を切り出した時のパーツを組み合わせれば、立方八面体になるかもしれない。
●今回の全ての多面体は、
辺の数(E)=頂点の数(V)+面の数(F)−2
が成り立ち、「オイラーの多面体の定理」が当てはまる。

《鉱物との関係》

●立方八面体は、正方形と三角形からなる多面体で、愛知県振草鉱山の黄鉄鉱と同じだ。
●切頂八面体は、長野県和田産の黄鉄鉱、愛知県振草鉱山の黄鉄鉱にも似る。
●正八面体は長野県産の黄鉄鉱に、不完全ながらも見られる。
●長野県産の黄鉄鉱の底面は正方形、その隣接面は正六角形で、切頂八面体と同じだ。

《結論》

立方体の8つの頂点を切り取ることで、4つの主な多面体が現れた。その多面体と同じ、あるいはそれに近い結晶が実際に存在していたため、仮説は成り立つのではないか。
ただし仮説は、「立方体」を完全形とすることが前提だ。「正八面体」を完全形とすると、結晶の成長方向は全く逆になる。正八面体の頂点を切り取れば「切頂八面体」となり、斜辺の中点を結んだ線で切り取れば「立方体」が現れる。つまり立方体の中に正八面体があり、正八面体の中に立方体がある。このように、一方の立体の性質が、もう一方の立体の性質と対をなしている関係を「双対(そうつい)」という。
 今回の実験で、立方体と正八面体の関係は一方向の変化・成長ではなく、どちらにもなり得る関係と言えることが分かった。関係のない多面体と思われた切頂立方体や立方八面体、切頂八面体も、その根底には密接な関係が含まれる。

【実験2】立方体の切頂と切り口の関係

 実験1ではさまざまな立体が現れ、その立体には正方形や正三角形、六角形、八角形などの“面”が現れた。切り取る位置と切り口との関係を調べる。

《結果》

立方体のスチロールの1頂点を、3辺の1/4、2/4、3/4…12/4の位置で順に切り取り、切り口の形状を見た。

追加実験頂点から6/4(2つ目の辺の中点)の位置で切ると、立方体が2等分されることを確かめた。

追加実験立方体4個をそれぞれ追加実験と同様に2等分し、できた計8個のパーツを組み合わせると切頂八面体になった。その体積は、切頂八面体の全体が接して入る立方体の体積の1/2になることが分かった。切頂八面体は、正方形の面をそれぞれ対角線で切り、8等分すれば、4つの立方体を作ることができる。

【実験3】多面体の変化とその方法

 黄鉄鉱の結晶には、まだまだ複雑な多面体が存在する。立方八面体を基に、多面体の変化とその関係性を調べる。

【実験3-1】

立方八面体を、各辺の中点を結んだ線で切り取った。「菱形立方八面体」ができた。辺の数48、頂点の数24、面の数26で、オイラーの定理が成り立つ。

【実験3-2】

立方八面体を、各辺1/3の位置で切り取った。「大菱形立方八面体」ができた。辺の数72、頂点の数48、面の数26で、オイラーの定理が成り立つ。

【実験3-3】

立方八面体を、各面の中心を結んだ線で切り取る。正三角形を上面に、正方形の中心を結んで切除→中心部に正八面体が残った。正方形を上面に、正三角形の中心を結んで切除→立方体が残った。

《分かったこと》

まさに立方八面体は、立方体と正八面体の中間に位置する存在だ。立体の変化の鍵は、頂点を切ること、面の中心を結んで切ることだ。

「プラトンの立体」作りに挑戦

 立方体(正六面体)と正八面体は「プラトンの立体」と呼ばれる5つの正多面体の2つだ。他の正四面体、正十二面体、正二十面体も作った。実験の過程で現れた切頂立方体、立方八面体、切頂八面体、菱形立方八面体、大菱形立方八面体は、13種類ある「アルキメデスの立体」のうちの5つだ。

まとめと考察

 双対の関係にある立方体と正八面体、正十二面体と正二十面体の2組は、それぞれ辺の数が同じで、頂点と面の数が対になっている。正十二面体は正八面体の中に含まれ、正十二面体は正二十面体の中に隠れている。正八面体は立方体の中にあり、立方体も正八面体の中にある。つまり5種類のプラトンの立体は、すべて立方体の中に含まれるのだ。しかし頂点、辺、面の数は全て偶数であり、奇数がないのはなぜか。双対はプラトンの立体以外には存在しないのか。疑問の方が多くなった。

指導について

指導についてドルカス・アドベンチャークラブ 内山 雅之

 これまで6年間、静岡、山梨、長野、愛知、岐阜と、県内外20カ所近くの鉱山跡やズリ、露頭などを調査し、多くの鉱物標本と情報を蓄積してきました。その結果、特にガーネットや黄鉄鉱、沸石が形作る結晶の多様性に関心が高まり、集大成としての本研究が始まりました。
 『オイラーの定理が鉱物結晶に適用できるのか』。研究当初は、十分な道具、情報、知識もなくまったくの手探り状態でした。それでも彼は、スチロールカッターを自作したり、作業の正確性や効率性を上げる方法を考え出したり、あるいは記録方法を工夫したりと、様々なアイデアを生かしながら、一歩一歩根気強く実験を積み重ね、データを検証していきました。こうした1つの事柄を、試行錯誤しながら最後までやり抜くことの経験は、彼にとって大変貴重な宝物となったことでしょう。その上、このような栄えある賞を頂くことができ、更なる探求への大きな励みとなることを確信しております。

審査評

審査評[審査員] 邑田 仁

 多様な自然現象の中から規則性を見つけ出すことは研究の醍醐味であり、科学の本質であるとも言える。本研究は7年間継続した野外調査と鉱物結晶の探索・収集に基づいており、本人の経験に裏付けられていることが高く評価できる。自分で観察した結晶の形から規則性を考えて、幾何学的なパターンに置き換え、そこからさらに実験的に模型を作ることによって再び目に見える形に再現しようとしている。この試みはまだ完結していないが、自然の不思議が次々と明らかになる面白さ、さらにその向こうに明らかにすべきことが見つかるという研究の面白さを十分に示している。結晶は硬くきっちりとした構造であるというイメージが強いために、規則性に強引に結びつける懸念があるが、本研究ではむしろ現実に存在する多様な結晶に柔軟に対応している点がすぐれており、今後が期待できる研究姿勢であるといえよう。

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