第63回入賞作品 小学校の部
2等賞

イモリの研究 ~模様の遺伝・イモリの謎に迫る~

2等賞

静岡県掛川市立大坂小学校 5年
伊藤 映人
  • 静岡県掛川市立大坂小学校 5年
    伊藤 映人
  • 第63回入賞作品
    小学校の部
    2等賞

    2等賞

研究の目的

 アカハライモリは田んぼや池、川の淀みなど流れのない淡水にすむ両生類の生き物だ。寒天質に包まれた卵が水中の水草などに産みつけられ、孵化して水中で幼生となる。幼生には外鰓があって、最初はおたまじゃくしのように脚もない。幼生は水中で小動物を食べ十分に成長すると、外鰓が消えて大人と同じような形の幼体となる。幼体は水から陸へと上がって森や林などで暮らし、冬眠を経て再び水域に戻り、成熟した大人に成長する。
 小学3年生の時、知人のイモリ師匠からアカハライモリ4匹を譲り受け、3年間育てている。最初の年は産卵や孵化、幼生の飼育などを初めて経験し、驚きと喜び、苦悩の連続だった。2年目には、孵化した幼生が幼体(丘イモリ)となった。初めての冬眠から再び水中に戻るまでを観察し、さまざまなことがわかってきた。
 図書館で借りた関慎太郎氏のイモリの写真絵本(2019年3月発行)には、「じつは、りくにあがった こどものイモリが、どこで どんなくらしを しているのかは、よくわかっていません。」と書かれていた。ここまでの飼育や観察で得られたデータを独自の視点で考察し、イモリの謎を解き明かしていきたい。

研究の方法

 アカハライモリの産卵時期は4〜6月ごろだ。1シーズンに複数回産卵する。3年生の時、譲り受けたイモリ4匹からは407個の卵を採取し、270個が孵化した。孵化した幼生は27匹を飼育し、陸上生活をする幼生、丘イモリまで育ったのは7匹だった。この時の飼育から、「天気に関係なく、湿度や気温が低いほうがメスは産卵しやすく、高いと産卵しなくなる」「卵が孵化するまでの様子」「気温や湿度が上がるとエサが減り、水質が悪化し、幼生は生存しにくくなる」などがわかった。この時、孵化した幼生の7月末までの生存率は1%だった。
 4年生では「1匹のメスがどれだけ卵を産むのか」をテーマに、一組のオスとメスのペアから150個の卵を採取し、112個を孵化させた。28匹の幼生を育て、そのうち6匹が丘イモリとなった。前年の教訓から気温や湿度の変化、水質の悪化に気を配り、水草の根ごと切って卵を傷つけないように採卵した。孵化した幼生の7月末までの生存率は19%まで上昇、この時はその他「15°C以下でエサを食べる量や活動が減る」「気温が上がるほど活発になり、下がるほど鈍くなる」などがわかった。
 また、大人イモリと、家で生まれた丘イモリを飼育することで、初めて冬を越して丸一年の生態を観察することができた。冬眠の方法を本やインターネットで調べたり、イモリ師匠に質問したり、実際に観察したりして、「冬越しに適した場所」「冬眠と気温の関係」「冬眠と採餌の関係」「冬眠は77日間」「イモリの陸上生活は約332日間」「産卵から再び水中生活に入るまで約455日間」「陸上の幼体は動くものしか食べない」など、丘イモリの謎がいくつも明らかになった。
 この時の研究では、時とともに幼体の腹の模様が親と似たものに変化することから、「親のお腹の模様が子供に遺伝する」傾向にも気がついた。ただ、どう模様が変化して、いつ変化が終わり固定するのか、新たな疑問も生まれた。さらに飼育を続ける中、「成長期はいつ?」「脱皮の回数やタイミングに決まりはあるか」「何がきっかけでエサを認識しているのか」「生態と気温に関係はあるか」など、いくつも新しい疑問がわいてきた。
 今回の研究では、最初に譲り受けた大人のイモリ4匹、小学3年生の時に生まれた幼体(中)6匹、4年生の時に生まれた幼体(小)4匹(親はメスが「かぶきやくしゃ」、オスが「コアラのマーチ」という名の大人イモリ)を飼育して気温(室温)、湿度、天気、エサの量、その他の成長の変化を細かく記録する。観察を通じて、今回明らかにしたい疑問と関連しそうな事象を、表やグラフにまとめて考察する。本やインターネットも活用し、自分なりの考えをまとめた。

研究の実際

お腹の模様は遺伝するのか

 幼体(中)は成長するにつれて、模様がどんどん増えて大人のようになっているので、模様は遺伝すると仮説を立ててお腹の観察を続けた。
 その結果、幼体(中)は2022年2〜4月から模様の変化が見られたが、5〜8月により大きく模様が変わった。「しまうま」という名前の大人と似た、黒の部分が多い模様に変化した。幼体(小・「キロのすけ」という名前)は2022年3月まではなかった模様が8月には現れ、親である「かぶきやくしゃ」と、「コアラのマーチ」の模様に似てきた。模様は遺伝するとわかった。
 お腹の模様は幼体(中)や幼体(小)など体が未完成のものは変化し、大人は全く変わらないことも確認した。大人イモリの推定年齢から、模様は4歳で決まると考えられる。その他、アカハライモリのお腹の模様は赤いはずなのだが、家で生まれた幼体(中)は黒くなってしまった。現時点では、家で育ち外敵を威嚇する必要がないから、赤くならなかったのではないかと推察している。


幼体(中)

イモリの一生を予想(ここまでわかったことから推測)

 個々の大人イモリの産卵状況や、誕生から家で育てた幼体(中)の産卵状況から、イモリの寿命は7年だと思われる。孵化はしなかったが、2歳の幼体(中)が産卵した。イモリは2〜6歳で卵を産むと考える。

0〜1歳

 水中の幼生から丘イモリ幼体(小)へ成長

1〜2歳

 丘イモリ幼体(中)から不完全成体(水中で生活)へ成長、卵も産むようになる

3〜4歳

 大繁殖期、完全成体(大人)となっている

5〜7歳

 繁殖期が終わり死を迎える

 また、個体ごとに記録している体重の変化から、成長期はいつかも考察した。各個体の体重記録から、世代ごとの体重増減の割合を算出した。さらに各世代1匹当たりの体重増減の割合を算出し、比較した。その結果、最も体重が増えていたのは幼体(小)だ。1匹当たりの体重におけるエサを食べた量でも、幼体(小)が最も多かった。大人の12倍を食べている月もあった(7月)。
 また、2021年8月〜2022年8月まで、各世代の1匹当たりの脱皮回数は大人6.92回、幼体(中)16.26回、幼体(小)0.5回だった。どの世代も脱皮する回数が多い月のほうが、脱皮しない月よりエサを食べる量が多かった。ただ、陸で生活する幼体(小)の脱皮は気づきにくく、正しい比較にならない。やはり、エサを食べる量が多く、体重が最も増える幼体(小)が成長期だと認定する。

採餌についてわかったこと

 アカハライモリがエサのアカムシを認識するきっかけは、色なのか、アカムシの汁なのか、においなのか。赤アカムシ、白アカムシ、赤い針金をそれぞれ口の前にたらし、2分以内で食いつくかどうかを調べてみた。赤アカムシに最も食いつくようなら色と汁、白アカムシなら汁とにおいや味、赤針金なら色がきっかけということになる。結果は赤アカムシには75%食いつき、白アカムシにも72.5%食いついた。赤針金には12.5%しか食いつかず、イモリはアカムシの汁でエサを認識していた。
 イモリがエサを食べる量と気温の関係も調べてみた。エサを食べる量と気温には明確な関係があって、初冬から冬の気温がグッと下がる時期、食べる量が減る。春から初夏、気温がグッと上がる時期、食べる量が増える。真夏日が続くと食べる量が減る。気温16℃以下の日が12日間続くと冬眠する。冬眠は90日ほど。冬眠から90日ほど経つと本能的に目覚めることもわかった。

次回への課題

 今回の研究でさまざまなことがわかったが、謎は残った。今後は体の模様を記録するため○日に1回写真を撮る、1週間に1回体重を量るなど、規則を作って観察したい。変化がよりわかりやすく、謎が解明できると思う。

指導について

伊藤 愛

 小さい頃から生き物が大好きで、カブトムシ、カエル、トカゲ…色々な生き物を観察飼育してきました。特に飼育4年目になるアカハライモリは、毎日気温と湿度を記録し、餌を与え、環境を整えて大切に成長を見守ってきました。産卵、たまごの中が変化していく様子を初めて見た時には、目を輝かせていました。水中生活だった幼生が陸に上がり、幼体となるまでの期間を目の当たりにし、生命の神秘を感じました。
 4年間の研究では思い通りにならない事も多々ありました。困難にぶつかる度、様々な資料を調べ、飼育している人に話を聞き、自分なりの考えをもって根気強く取り組んでいく様子は、正に生物学者そのものでした。
 今回の研究結果は、手探りで成長を見守り、溺れないか、餓死しないか、気を配りながら毎日自分で世話をしてきたからこそ解き明かせた謎だったと思います。地道に積み重ねてきたことが今回認めていただけた事で、未来が開けたような気がします。

審査評

[審査員] 西尾 克人

 研究の動機に書かれている通り、「じつは、りくにあがったこどものイモリが、どこで どんなくらしをしているかは、よくわかっていません。」と文献を引用しており、誰も成し遂げていない謎に迫った壮大な研究であることがわかります。その謎も様々で、「お腹の模様は遺伝するのではないか?」、「イモリの成長期はいつ?」、「脱皮のタイミングに決まりがあるのか?」など多面的にイモリの生態について捉えています。秀逸なのは、その謎(問題)に毎日の飼育と観察で得た膨大な情報(事実)に基づき、考察し結論を得ていることです。これらの過程は、科学者が仮説を検証していく科学的な手続きであり、科学の世界を第5学年で既に実践していることに驚かされます。また、結論には「推定で、4歳で模様は決まる」、「イモリの寿命は現時点の予想は7歳」など得た結論が確証ではなく、「推定」、「現時点」等の言葉を使い、これからもイモリの謎に迫る研究を続ける決意を感じることができます。素晴らしい追及の姿です。これからもぜひ研究を続けてください。これからの研究に、エールを送り審査評といたします。

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