第56回入賞作品 中学校の部
継続研究奨励賞

身の回りの種図鑑4
~私がこの夏、出会ったタネたち2015~

継続研究奨励賞

福島県二本松市立二本松第一中学校1年
渡邉弥生
  • 福島県二本松市立二本松第一中学校1年
    渡邉弥生
  • 第56回入賞作品
    中学校の部
    継続研究奨励賞

    継続研究奨励賞

研究の動機

 小学4年生から身の回りにある植物の種について研究している。種(豆)には年によって成長に差があることに気がついた。新しい豆と古い豆の違いは「鮮度だ」と思い、その仮説を検証する。また「酸性雨の影響」を豆で調べられないかと考え、いろいろな種類の水による豆の成長に及ぼす影響について実験する。

研究Ⅰ
新旧豆の発芽率~鮮度の検証実験

 古い豆と新しい豆をまいて、発芽率や成長の様子を観察し比較する。

《方法》

 2013年産と2014年産の6種類の豆(小豆、大豆、青大豆〈青ばた豆〉、大正金時、大福豆、紫花豆)を用意する。それぞれ10個を一晩水にひたして(吸水させてから)、水で湿らせた脱脂綿の上にまき、その上からキッチンペーパーをかぶせた。日の当たる室内(26~27℃)で10日間栽培し観察した。

《結果》

◇小豆:〈2014年産の新豆〉種まき後3日目に根が出て、4日目に確認した発芽は7個(70%)、6日目は10個(100%)が発芽していた。〈2013年産の旧豆〉4日目に1個、6日目に2個が発芽していた。

◇大豆:〈新豆〉3日目にすべて発芽。〈旧豆〉4日目に2個発芽していたが、その後1個を残して、他の豆はすべて変色し傷んでしまった。

◇青大豆:〈新豆〉2日目に確認した発芽は5個、4日目はすべてが発芽していた。〈旧豆〉4日目に5個が発芽していた。

◇大正金時:〈新豆〉2日目に1個の発芽を確認した。3日目は4個、4日目は9個が発芽していた。〈旧豆〉5日目に1個が発芽していた。

◇大福豆:〈新豆〉2日目に2個、4日目に4個が発芽していた。〈旧豆〉4日目に2個、5日目に4個が発芽していた。

◇紫花豆:〈新豆〉3日目に確認した発芽は8個、5日目は9個、6日目は10個が発芽していた。〈旧豆〉5日目に3個、6日目に7個、7日目に8個が発芽していた。

《まとめ》

 発芽率は古い豆43.3%、新しい豆88.3%。発芽し成長した「生き残り率」は古い豆38.3%、新しい豆81.7%だった。新しい豆も古い豆も、発芽率に対する生き残り率は低下した。
 やはり豆の発芽には鮮度が関係している。新しい豆の方が、古い豆よりもよく育つ。また古い豆の方が、栽培中に豆の色が抜け出る「脱色」が激しかった。新しい豆でよく育ったのは小豆、青大豆、紫花豆。古い豆では柴花豆がよく育った。新旧ともによく育ったのは紫花豆と青大豆だった。〈傷んで古くなる=鮮度が落ちる=発芽率が低くなる〉という等式が考えられる。

研究Ⅱ
5種類の水による豆の発芽・成長実験

 いろいろな種類の水で豆を育て、その発芽や成長の様子を観察し、発芽率、生き残り率を比較する。

《方法》

 5種類の水(普通の水、砂糖水〈濃度3%〉、食塩水〈海水と同じ濃度3%〉、クエン酸水〈酸性雨を想定した濃度3%〉、コメのとぎ汁)で、2種類の豆(大豆、紫花豆)各10個を研究Ⅰと同様の方法で育てた。

《結果》

◇普通の水:〈大豆〉種まき後4日目には8個が発芽していた。発芽率90%・生き残り率80%。〈紫花豆〉成長スピードが遅く、3日目に発芽していたのは2個だった。発芽率100%・生き残り率100%。

◇砂糖水:〈大豆〉3日目に6個が発芽していた。6日目にはカビが増え、変色も多かった。発芽率90%・生き残り率90%。〈紫花豆〉3日目に4個、4日目に8個が発芽していた。発芽率80%・生き残り率80%。

◇食塩水:〈大豆〉3日目に1個、4日目に2個が発芽していた。変色が激しい。腐ったような臭い。発芽率20%・生き残り率10%。〈紫花豆〉すぐに脱色した。5日目にカビが生え出した。発芽率0%・生き残り率0%。

◇クエン酸水:〈大豆〉3日目に1個が発芽していた。青カビが生えた。発芽率10%・生き残り率10%。〈紫花豆〉豆のピンク色が脱色し周りに溶け出た。3日目に1個、4日目に4個が発芽していた。成長が遅い。カビがひどい。発芽率60%・生き残り率60%。

◇とぎ汁:〈大豆〉3日目に6個が発芽していた。成長が良く4日目には根を張ったものもある。発芽率60%・生き残り率60%。〈紫花豆〉3日目に2個、4日目に9個の発芽を確認した。成長が早い。9日目には5個から葉が出ていた。発芽率100%・生き残り率100%。

《考察》

●「大豆」は、普通の水、砂糖水を与えたものがよく育った。食塩水とクエン酸水は豆が成長しなかったり、発芽しなかったりした。これは塩害と酸性雨のもたらす影響だ。高潮や津波に襲われた地域や酸性雨が降る地域はキツイだろうと思う。食塩水は「腐る」という影響、クエン酸水は「カビる」という影響がすごかった。不思議だったのは、クエン酸水の「酸」はカビをやっつけるはずなのに、カビが生えたことだ。酸が薄れたのか。
 成長の早さ、育った豆がしっかりしているという点では、とぎ汁が一番よかった。1日3㎝以上伸び、根や茎がしっかりしていた。ただ、とぎ汁は発芽率が低かった。大豆では、順調に(確実に)育てるなら普通の水と砂糖水、よく(早く)育てるならとぎ汁を与えるのがいい。
●「紫花豆」は、普通の水ととぎ汁を与えたものがよく育った。食塩水では発芽すらしない。クエン酸水が発芽・生き残り率とも60%で、意外に高かった。紫花豆は皮が厚いから、酸をあまり吸収しなかったのか、影響をはね返したのか。しかし、成長が格段に遅かった。発芽したけれど、後からカビたり、成長が止まってきたりと、いわゆる“後発性”の影響がみられた。とぎ汁は、大豆の時よりも発芽・生き残り率が良かった。5日目には側根が伸び、観察の最終日には60%の豆から葉が出た。とぎ汁の効果的な成分が何であるにしても、普通の水による成長の高さが不思議だ。また、与えた水による脱色効果も見られた。食塩水では茶色っぽく、クエン酸水では赤っぽく脱色した。水の成分によって抜ける色素が違うのか。

《まとめ》

 大豆、紫花豆ともに成長率が良かったのは普通の水だった。次は砂糖水だが、後からカビが生えて、成長が遅くなるという欠点があった。よく育つのはコメのとぎ汁だった。コメの成分が豆の成長に作用したのだろう。
 大豆と紫花豆に対する(合わせた)5種類の水の発芽率は、普通の水95%砂糖水85%とぎ汁80%クエン酸水35%食塩水5%の順だった。同じく生き残り率は、普通の水90%砂糖水85%とぎ汁80%クエン酸水35%食塩水5%の順だった。
 後からの影響が出ずによく育つのは普通の水だが、生き残り率は発芽率よりも低下した。どちらも変わらずに、豆をよく育てられるのがとぎ汁だ。

研究の感想

 豆を通して塩害や酸性雨の影響をある程度知ることができたが、まだまだ調べ切れないこともあった。途中で浮かんだ疑問にも手が回らないなど、課題や反省があるが、豆についてよく分かり、楽しかった。

指導について

指導について渡邉 有紀子

 小学3年生で「植物の水の通り道」を調べて以降、毎年植物の姿を追いかけてきた娘の研究です。野菜や果物を量っては切ってスケッチし、種を出して洗い、数えて乾かし標本を作り、考察して……という地道な作業を見ているのは楽しいことでした。娘の目を通して見る、見慣れたはずのものたちは新鮮で、彼女が格闘する様子を面白がりながら見つめてきました。図書館や材料集めに連れていったり、眠い目をこすりながらの観察につき合って起きていたりはしましたが、親のできたことはそう多くはありません。
 今年の夏は日々豆の絵ばかり描き続け、見ているこちらは飽きないのかしらと思う程でしたが、本人いわく「ぜんぜん飽きないよ、ちょっとずつ違うから」とのことでした。この尽きない好奇心が、彼女の原動力なのでしょう。
 これまで彼女の研究を見守り、折に触れ励まして下さった多くの皆様、調査で毎年お世話になっている岩代図書館の皆様にお礼を申し上げたいと存じます。

審査評

審査評[審査員] 髙橋 直

 植物のタネについての4年目の研究である。今回はタネの「鮮度」と発芽率や発芽後の成長との関係、発芽の際に吸水させる水と発芽率や成長との関係について実験をしている。
 「鮮度」については、6種の豆について2013年産と2014年産の豆を用い、5種について、古い豆の方が発芽率の悪いことを示す結果を得ている。1種は古い方がやや発芽率がよいという結果になったが、新旧の豆で保存条件が同じだったのかを検討してみるとよいかもしれない。吸水させる水として、砂糖水、食塩水、クエン酸水を用いた実験では、砂糖水を用いたものだけ何も溶かしていない水を吸水させたものと同等の発芽率を示し、食塩水とクエン酸水では発芽率が非常に低くなるという、塩害や酸性雨の影響につながる結果を得ている。
タネについて様々な疑問を持ち、それらの疑問について実験と考察を繰り返すことで、自然をより深く理解することができるようになっていくだろう。「継続は力なり」である。

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