第51回入賞作品 中学校の部
1等賞

ツバメは、スズメによって繁殖が守られるのか?
-日東保育園での観察から-

1等賞

愛知県日進市立日進西中学校1年
野々 雄斗
  • 愛知県日進市立日進西中学校1年
    野々 雄斗
  • 第51回入賞作品
    中学校の部
    1等賞

    1等賞

研究の動機

 小学3年の冬(2006年12月)に、妹が通う日東保育園に1羽のツバメがいた。なぜ寒い時期に日本にいるのか不思議に思い研究を始めた。今年で4年目になる。

昨年の研究で分かったこと

《目的》

これまでの結果を検証し、昨年スズメに巣を横取りされたツバメのペアがどのような行動を取るのか観察する。繁殖期間を「営巣まで」「ふ化まで」「巣立ちまで」の3段階に分けて、オス・メス両方の行動に注目する。特にスズメの行動がどのように影響しているのか、ツバメとスズメの関係もしっかり見ていく。

《方法》

観察期間:2010年1月11日~8月6日、観察対象:体の特徴から名付けたツバメのペア「ブラック君・ブラックちゃん」。このペアは造巣や抱卵、育雛の途中でスズメに襲われ、そのたびに代わりの巣を選び(巣→巣→巣→巣→巣)、最後の巣で巣立ちに成功した。

目的1:営巣までの行動について調べる

 巣、巣で6項目について調べた。

《結果》

(1)巣からみた親の行動:では不在が66%、攻撃が23%、巣にとまったのが12%と、不在の割合が高かった。攻撃は「警戒」「いかく」「巡回」が見られたが、「追い払い」「体当たり」は見られなかった。巣では、不在が40%、攻撃が36%、営巣が24%だった。攻撃は「プレッシャー」「警戒」「いかく」「追い払い」「追いかけ」「体当たり」「巡回」というように、「攻撃7パターン」すべてが見られた。

(2)オスの行動:では、メスがほとんど不在だったので、(1)の親の行動とほぼ同じだった。巣では、不在は11%、攻撃が68%、営巣が21%。不在の割合は低かった。

(3)メスの行動:では巣にとまった3%以外は、97%が不在だった。巣では、営巣28%、攻撃5%、不在が67%と、巣に比べて、不在の割合は低かった。

(4)攻撃の行動の回数:では1時間にオスが29回と、メスの2回の約15倍。巣ではオスが69回、メスが18回と、オスはメスの約4倍で、巣よりも攻撃の種類、回数ともに多かった。

(5)スズメがツバメの縄張りに侵入した回数:では合計6回、巣では26回と、巣の方が多かった。

(6)営巣の成功と失敗:、巣ともにスズメに横取りされて失敗した。

《考察》

では、オスにそこそこ頑張りはあったが、巣がスキだらけだったので、スズメにあっさりと巣を取られた。巣ではオスは攻撃して巣を守ろうとしたが、スズメの攻撃数の方が上回り、スズメの侵入を防げなかった。

目的2:ふ化までの行動について調べる

-1:5月7日観察、-2:5月15日観察)と巣、巣で10項目(抱卵パターン、オス・メスの抱卵割合、巣からみた親の行動、オスの行動、メスの行動、攻撃行動の回数、スズメがツバメの縄張りに侵入した回数、抱卵中の不安行動、産卵数とふ化数、ふ化の成功と失敗)について調べた。

《結果と考察》

のうち-1では、縄張りに侵入したスズメの数が1時間に9羽と極端に多くはないが、スズメが巣に気づき、ジワジワと侵入し始めた状況だ。巣の空きはわずか4%、オスの攻撃は合計で36%と、オスがよく頑張っている。抱卵も安定したパターンで、抱卵の割合も問題はない。「ふ化に成功する3つの条件」=オスが抱卵すること、オスが攻撃(特に基本的4攻撃)ができること、オスが不在時間を少なくすること=を満たしているので、スズメに狙われ始めても、抱卵期を続行できたと言える。
  しかし、見逃してはならないオスの行動があった。抱卵のために入巣している時に、首をひんぱんに振る行動が確認された。1分間で14回、抱卵中の7割が上、後ろ、右と、スズメが現れそうな方向を見るのだ。巣の外での警戒行動とは異なる、オスの不安な心理状態を表す行動(不安行動)だ。その一方、メスには不安行動がほとんどなかった。このオスは昨年、営巣5個のうち1個がスズメに取られたり、卵やヒナを落とされた経験をもつ。こうした経験の違いが、オスとメスの不安行動の差になったもので、-1でオスは余裕がない状態だったと考えられる。
  その8日後の-2では抱卵期が続いていたが、より緊迫した状況だ。抱卵時間が短くなり、その分、交代も早く、リズムの安定さに欠けたパターンだ。巣の空き時間は0%、オスの行動も不在が6%と、自分の給餌以外は、抱卵とスズメへの攻撃に徹していた。特に「体当たり」攻撃が1時間に6回と多く、オスはスズメに対して必死に攻撃した。また抱卵中に突然飛び出し、高速で中庭をUターンして戻って、また抱卵を続ける不安行動(高速戻り)も見られた。巣を狙うスズメが三方から集まって増え、ツバメの対処の限界を超えたためふ化に失敗したのだ。
  巣では3個産卵し、3個ともふ化した。3条件を満たしていないのに成功できたのは、スズメによる縄張りへの侵入が1時間に2回と、スズメがまだ巣を狙う状況ではなかったからだ。巣でも4個産卵し、4個ともふ化に成功した。こちらはスズメの縄張りへの侵入や攻撃はなかった。すぐ近くに2個のスズメの巣()があり、それぞれスズメのペアが繁殖活動をしている。そのため他のスズメたちはツバメの巣にも近寄れず、攻撃もできなかったのだ。

目的3:巣立ちまでの行動について調べる

、巣で8項目(巣からみた親の行動、オスの行動、メスの行動、給餌回数、空き時間の合計と最長空き時間、スズメが縄張りに侵入した回数、ふ化数と巣立ち数、巣立ちの成功と失敗)について調べた。

《結果と考察》

では3羽がふ化し、3羽ともスズメに落とされ、巣立ちに失敗した。巣では4羽がふ化し、3羽が巣立ちに成功した。1羽はふ化して2日目に巣の下に落ちていた。他のヒナよりも体がとても小さく、スズメに落とされたのではない。これまでの研究で、「巣立ちに成功するための3条件」はオスが攻撃できること、巣の空きを30%以下にすること、巣立ちに必要なエサを与えることだ。巣では3条件を満たしていたが、スズメの縄張りに侵入した回数が1時間に34回と、ふ化の段階までの4回から大幅に増えて、ツバメは対処できず、巣立ちに失敗した。
は5割以上が空で、オスの行動は8割近くが不在、メスも同様だった。巣立ちの3条件のうち「巣立ちに必要なエサを与えること」しか満たしていなかった。繁殖に成功したのは、「スズメとの関係」だ。目的2の「結果と考察」でも述べたが、巣のすぐ近くには繁殖中の2個のスズメの巣があった。この2組のスズメペアは、すでに巣も巣材もあるので、自分たちの巣作りのために、ツバメを攻撃する必要がなかった。また連続繁殖の実績もあるので、スズメたちの中でも特に力が強く、他のスズメも近づくことができなかった。このため巣のツバメは、力の強いスズメの巣の存在によって、安全に確実に子育てができたのだ。

研究のまとめ、総合考察

(1)過去の研究結果の検証

「営巣」「ふ化」「巣立ち」の成功と失敗には、「スズメの攻撃の数」が大きく影響している。繁殖に必要な4条件(オスが抱卵 オスが攻撃 巣の空き時間は30%以下 ヒナへの必要な栄養)を満たしても、スズメの攻撃数が多いと、ツバメは対処能力を超え、繁殖に失敗する。巣を奪われた経験があるツバメには「不安行動」が出現する。スズメが多い場合に、ツバメが繁殖に成功するには力の強いスズメの巣の近くで営巣することだ。

(2)昨年繁殖に失敗したツバメのペア(ブラックペア)の行動

が安全なことが分かっていて、最後にこの古巣を選んだのではないか。しかし、スズメに巣を奪われることを警戒して、最初から来れなかった。民家で巣を作るツバメとスズメは昔から巣の取り合いはあったし、スズメ社会の力関係のこともツバメはよく知っていたのではないか。この「異種間関係」に注目して、来年も研究していきたい。

指導について

指導について野々さゆり

 中学生になった途端、部活と勉強に大忙し。サッカー部は県大会等々の試合で優勝する強豪だけに練習は厳しい。朝練前の5時、練習後の19時過ぎ、わずかな休日は朝から晩までというふうに、時間との戦いに悩みながらも、観察を止めることはなかった。同じ研究対象と場所でも、小学生までと今回では、全く逆の視点で結論を導いたことは、地味な観察を地道に続けたからこそ見えてきたものだった。さらに炎天下の過酷な環境は、行動の変化を見逃さない集中力も養ってくれた。仲間との遊びや趣味のピアノも大事。「なにもかも」ではなく、選択し貪欲に生きる姿がある。「今を生きる」(日進西中学校校訓)。これからもすべてに感謝し、1日1日を大切に過ごしてほしい。
  最後になりましたが、観察の場を快く提供し温かく応援して下さる日東保育園園長の成田先生に心よりお礼申し上げます。

審査評

審査評[審査員] 邑田 仁

 自然現象には何度も繰り返すことと、めったに繰り返されないことが混じっている。ひとつの対象を長年観察することにより、繰り返しの中にある自然現象の規則性を明らかにすることができるし、また、規則にあてはまらない思いがけないことに出会って次の発見の糸口を見つけることもできる。この研究はそうした継続観察の特徴をよく発揮している。2010年には観察場所にやってきたツバメが1組しかいなかったために、かえって、同一のペアに集中して行動を比較観察するよい機会であったといえよう。1ペアが、失敗にめげず5回も営巣することを記録しただけでも驚きだが、それぞれの巣の条件と、同一のツバメの行動を対応させて比較したことが成功し、スズメという別種の鳥の影響を見事に描き出している。観察されたツバメの行動がどこまで本能によるもので、どこから学習に基づくものなのかなど、まだまだ不思議は尽きない。研究のさらなる発展を期待したい。

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