第51回入賞作品 小学校の部
オリンパス特別賞

だんごの研究

オリンパス特別賞

秋田県にかほ市立上郷小学校サイエンスクラブ 6年・5年・4年
秋田県にかほ市立上郷小学校サイエンスクラブ 6年・5年・4年
齋藤 爽彩 他4名
  • 秋田県にかほ市立上郷小学校サイエンスクラブ 6年・5年・4年
    齋藤 爽彩 他4名
  • 第51回入賞作品
    小学校の部
    オリンパス特別賞

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研究の動機

 だんごは米などの穀物の粉に水やお湯を加えてこねて、蒸したりゆでたりして作る、日本に古くから伝わるお菓子だ。白玉だんごは白玉粉(もち米)100%、月見だんごは白玉粉と上新粉(うるち米)を半分ずつ混ぜて作ったものだ。大麦、あわ、きびなどの穀物にも「もち種」と「うるち種」がある。もち種の穀物は蒸してつくと、もち米のように粘り気が出るため、だんご作りには向いていそうだ。様々な穀物や精製デンプンを混ぜることで、これまでにない食感やおいしさをもつ新しいタイプのだんごを考え出したい。

研究の進め方

(1)市販の穀物粉や精製デンプンからだんごを作る。
(2)ベースになる穀物粉に様々な穀物粉を混ぜて、新しいタイプのだんごを作る。
(3)作っただんごの食感、気づいたことなどをまとめる。

実施の方法
粉100gをこねて「耳たぶ」くらいのやわらかさになる水の量を測定する。
直径約3.5㎝に丸めただんごを、沸騰したお湯(1000ml)に入れて、浮かんでくるまでの時間を計る。
ゆでただんごを水道水(22℃)で冷やし、重さを測定する。
だんごを丸スプーンに詰め、はみ出した部分を釣り糸で切って、断面の顕微鏡画像を観察、ヨウ素デンプン反応を見る。
だんごを小豆とともに料理し、クラブ員が食べる。「食感」は1~5の5段階評価とし、白玉だんごの食感(やわらかさ5、弾力5、滑らかさ5)を目安とする。「食味」はA(とてもおいしい)、B(おいしい)、C(まずい)、D(食べられない)で評価した。

市販の穀物粉や精製デンプンを使っただんご作り

 白玉粉(もち米)、上新粉(うるち米)、片栗粉(ジャガイモ精製デンプン)、小麦粉(薄力粉:小麦)、コーンスターチ(トウモロコシ精製デンプン)、コーンフラワー(トウモロコシ)、大麦粉(大麦)、もち麦粉(もち麦)、そば粉(一番粉:そば)でだんごを作り調べた。なお、使用した市販の穀物粉は、胚乳部分をひいて粉にしたものだ。胚乳部分とは胚芽がとれた精製部分で、そば粉は「一番粉」がそばの実の胚乳部分、「二番粉」が胚乳部分と胚芽の一部が混じっている粉だ。

〈分かったこと〉

そば粉以外の穀物粉(白玉粉、上新粉、小麦粉、コーンフラワー、大麦粉、もち麦粉)からは、おいしいだんごができた。もち種の穀物粉のだんごは、こねる水の分量が多く、浮かぶまでの加熱時間が短く、重さの増加分が大きいという傾向を示すのかもしれない。
  精製デンプンの片栗粉とコーンスターチは、水を加えていくと(粉100gに対して片栗粉65ml、コーンスターチ66ml)、にぎると固まるが、にぎる力をゆるめると液体のようになる「ダイラタンシー」という現象が起きた。そこで、丸める代わりにラップに包んで9分間加熱してみた。片栗粉のだんごも、コーンスターチのだんごも、外側が半透明でかたい層になり、内側は粉のままで、熱の通っていない様子だった。熱が通るように形を円ばん状につぶしても結果は同じで、内部は粉のままだった。これはラップに包んで加熱している間にダイラタンシーを起こし、水分が外側に移動して、その部分だけがゼリー状に変化し、内側は水分がなくなり粉のままになったと、考えられる。
  ヨウ素デンプン反応では、青むらさき色以外にもいろんな色があった。おいしい白玉だんごは赤系の色を示した。顕微鏡画像では、片栗粉とコーンスターチに精製デンプンの粒がよく見えた。穀物粉は、細かく砕かれた実(胚乳)の周りに、デンプンの粒らしきものが少し見える状態だ。
1:白玉粉(表2)
写真3:片栗粉の画像

胚芽部分も一緒にひいた市販の穀物粉を使っただんご作り

 もち玄米粉(もち米)、玄米粉(うるち米)、もちあわ粉(もちあわ)、うるちあわ粉(うるちあわ)、ひえ粉(ひえ)、もちきび粉(もちきび、いなびき)、きび粉(きび、たかきび)、そば粉(二番粉:そば)で、だんご(球状、円ばん状)を作り調べた。

〈分かったこと〉

もち玄米粉、もちきび粉、きび粉、そば粉(二番粉)から、おいしいだんごができた。もちあわ粉はもち種だが、火の通りが悪く、苦味も強くておいしくなかった。ヨウ素デンプン反応では、もち玄米粉、もちきび粉、きび粉のだんごで赤みが強い。顕微鏡画像では、胚芽部分も一緒にひいた穀物粉は粒が大きく、デンプンは見えなかった。

おいしいだんご(ハーフだんご)作りへのチャレンジ

 もち米粉をベースに他の穀物粉を同量混ぜて、だんご(ハーフだんご)を作った。だんご名は例えば、もち米粉と上新粉を混ぜたものは「上新粉ハーフだんご」(本来は「月見だんご」だが)、もち米粉ともち麦粉を同量混ぜたものは「もち麦粉ハーフだんご」と呼ぶことにした。

〈分かったこと〉

16種類のハーフだんごを作った。とくに「上新粉ハーフだんご」「もち麦粉ハーフだんご」「もちきび粉ハーフだんご」「そば粉(二番粉)ハーフだんご」は、もち米のもつやわらかさに、混ぜた穀物の素材のよさがブレンドされておいしいかった。「片栗粉ハーフだんご」は、ダイラタンシーは起こさなかったが、食べられるだんごにはならなかった。「コーンスターチハーフだんご」とは対照的だ。「玄米粉」「もちあわ粉」「うるちあわ粉」「ひえ粉」のハーフだんごは、おいしくなかった。
  おいしいだんごになるための条件は、粉100gに対する水の分量は80~100ml、だんごの重さの増加分は80~100g。だんごが浮かぶまでの加熱時間は、これら水の分量、重さの増加分と反比例するように思われる。
  ヨウ素デンプン反応は、もち米と混ぜたものなので予想通り赤みが強い。食べられなかった「片栗粉ハーフだんご」は青みが強く、「コーンスターチハーフだんご」は、よく粉を混ぜたにもかかわらず、外側は青く、内側は赤みが強かった。加熱中にコーンスターチが外側に、もち米粉が内側に移動したのだろうか。

研究の成果、分かったこと
3つの新しいタイプのおいしいだんご「もちきび粉ハーフだんご」「もち麦粉ハーフだんご」「そば粉(二番粉)ハーフだんご」を作ることに成功した。
米、雑穀(あわ、ひえ、きび)を原料とした粉は火の通りがよく、だんご作りに向いている。胚芽部分はだんごにした時に苦味が出るが、きびは「もち種」「うるち種」ともに苦味が気にならない。精製デンプンは、生地を作ろうとするとダイラタンシーを起こす。
おいしいだんごはやわらかく、弾力があり、滑らかな食感をもつ。ヨウ素デンプン反応で赤みが強い。
生地をねる水の量、および、だんごの重さの増加分が大きくなると、だんごが浮き上がるまでの加熱時間は短くなる。この傾向は、顧問先生の知人の会社での分析結果から、穀物粉の粒の直径(平均径)、分布幅、分布曲線の2つあるピーク(山)のうち、直径が大きい方の粒の量などが関係していると思われる。
穀物粉に水を混ぜて生地を作り、お湯でゆでるだんご作りでは、食感や食味にかかわらず、加熱時には穀物粉100gあたり15ml前後の水を吸収する。

指導について

指導についてにかほ市立上郷小学校 齋藤成人

 今年度は、昨年までの流れを受けて、食べ物シリーズで、しかも身近なものを研究したいということから、「だんごの研究」に決まりました。
  研究方法の決め方などについては、本クラブの場合、実に手慣れていて、安心して活動を見守ることができました。しかし、白玉だんごを食感や食味の基準にしたため、それを超えるおいしいものができず、悩んだ時期もあったようです。その後、雑穀粉やもち米と他の粉を混ぜてのだんご作りにチャレンジするなど、たくましい問題解決能力を発揮してくれました。そんな研究を進める中で、粉の大きさを測定して考察したいということになりました。正直、小学生のクラブでは無理かなとも感じましたが、㈱TDKの明平氏の指導と協力を得ながら、みんなで分布幅やピークのとらえ方を決めて考察を加えることができました。
  研究の最後には、こうすればとてもおいしい3つの新しいタイプのだんごが作れるというところまで達することができ、本校サイエンスクラブの力強い探求心には本当に感心しました。

審査評

審査評[審査員] 赤石 保

 「これまでにない食感やおいしさをもつ新しいタイプのだんごを作る」という身近で素朴な願いからの研究テーマで、楽しみの多い研究になりました。
  9種類の市販の穀物粉で作っただんごの基礎研究では、ヨウ素デンプン反応と合わせて、顕微鏡画像を撮って丁寧に観察しています。顕微鏡画像で片栗粉などの精製デンプンと穀物粉では、デンプンの見え方が大きく違うのがよくわかります。
  さらに、十数種類のハーフだんごを作って、食味評価とやわらかさ、弾力、なめらかさとの関係で分析しています。おいしいだんごほど、やわらかく、弾力があり、なめらかな食感をもつという結論を出しました。
  サイエンスクラブのメンバーが協力して、たくさんのだんごのデータを丁寧にとって、写真を入れた見やすい表にまとめたことも素晴らしいです。

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