第47回学校取材レポート

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千葉県千葉市立緑町中学校

研究のテーマ案は1人100個!

科学の世界へようこそ!

まるで、カラフルなおもちゃ箱! 緑町中学校の理科室前には可愛らしいマペット達、カブトムシやクワガタの模型などが並んでいる。それぞれのコーナーには「動物らしい動きってどんな動きなんでしょう?」「ムシキングを科学する」などの問いかけがあり、思わず、足を止めたくなる。
そして、理科室の扉にはこう書いてある。「科学の世界へようこそ!」。
このワンダーランドの主(あるじ)が、昨年度の自然科学観察コンクール・指導奨励賞(中学校の部)を受賞した古市直彦先生だ。

ひとり100個のテーマ探し

同校は伝統的に理科の自由研究「ひとりいち研究」に力を入れてきた。夏休みには全員が必ず1つの研究を完成させる。ここに古市先生はじっくりテーマ探しに取り組むというプラスアルファを加えた。
「身のまわりのことで、自由研究のテーマになりそうなものを思いつくだけあげてもらい、その中から絞り込んでいく方法です。まず、5月上旬までに25個、さらに6月上旬までに別のテーマを25個考えてもらいます」
できるだけ具体的なテーマがいいこと、小学生レベルの観察、やりつくされたテーマは避けることなどを最初に説明する。
「最後に、新たな50個を7月上旬までに。これで計100個です。1カ月ごとに3回の締切りがありますが、最後の50個が試練ですね。でも、皆、よく考えてきてくれますよ」
 

「ひとりいち研究のテーマを考えよう」の
プリント

5個に絞り込んで先生と相談

夏休み前には100個のテーマを1つに絞り込む作業が待っている。まず、「中学生の研究として面白みのあるものか」「レポートが30~40ページ程度書けそうな内容か」などのポイントに照らし合わせ、自分で5つまでテーマを絞る。そして、一人ずつ先生と相談。こうしてようやく自分だけのテーマが決定される。
「数にこだわっているわけではありませんが、数さえあげてくれれば、いいテーマを見つけやすい。その子の好みもわかります」
古市先生が顧問を務める科学部では、さらに上を目指し、全員で1000個が目標。
「この中の1つが科学部の研究テーマになります。部員は7人なので、ひとり150個弱。このほかに自分用に100個考えるから大変です」

好きな分野から理科にアプローチ

古市先生は、一昨年の夏、米・ハーバード大学の教育大学院で1週間、研修を受けた。ソニー教育財団の海外派遣の一員に選ばれたのだ。
「一番、印象的だったのは『マルチプル・インテリジェンス』という考え方でした。ハワード・ガードナー氏が提唱しているもので、多重知性と訳されています」
インテリジェンスには言語的知性、空間的知性、音楽的知性、運動感覚的知性など8つの特性があるとする考え方。「ひとりいち研究」のネタ探しにも、マルチプル・インテリジェンスが使えるのではないか、と古市先生はひらめいた。
「理科が好きではない子供も、国語や音楽、美術など興味を持てるジャンルからなら入りやすいかもしれない。生徒の多様なひらめきを引き出すためにも、いろいろな分野から理科にアプローチしてもいいのかな、と思うきっかけになりました」

「ドリーム・ボックス」でネタ探し

ここで、古市先生が見せてくれたのは、理科室に置いてあるいくつもの青い箱。ある箱には卓球のラケットやバドミントンの羽根が、また別の箱にはマッチとキリ、ドライバーなど工具が入っている。
「日常や部活で使うものばかりです。『この箱の中身でどんな研究ができるか、10分間で考えてみよう』という課題を出すこともあります。単純にテーマを探せというだけでなく、具体的なヒントが必要です」
これも“マルチプル・インテリジェンス”の応用編。古市先生はこの箱を「ドリーム・ボックス」と名付けている。
 

発想を広げる「ドリーム・ボックス」

科学とアートとポエムが融合

2階廊下の「さくら通り」

いくつもの教科をリンクさせた掲示物は学校の中でも目につく。例えば、ガラス窓越しに桜並木を望む2階の廊下は「さくら通り」と名付けられ、出窓スペースを季節にあわせた特集コーナーとして活用。訪れた時はバードウイークにあわせ、鳥の図鑑や絵本、本物のメジロの巣、鳥のおもちゃなどが並べられていた。
また、「科学は僕らの横にいる」「理科は全ての原点。」など、理科をテーマにした川柳やポエムを掛け軸にした作品も校内のあちこちに。これも理科と美術と国語を融合させた試みだ。
「ひとりいち研究のテーマを見つけるためには、図書室やコンピュータ室を使ってもいいし、ドリーム・ボックスを見てもいい。理科室には過去数年間分のレポートを置いてあるコーナーがある。先輩や友達の作品を見ることもヒントになります」
学校の中は研究のネタやヒントの宝庫だ。

コンクールへは選抜したものを

さて、夏休みが明けて提出された自由研究は、1週間かけてじっくり読み、相応のレベルのものにはコンクールへの応募をすすめる。千葉市総合展(理科部門)への出品のほか、県レベル、全国レベルの各種コンクールに子供の希望に応じて応募する。
自然科学観察コンクールへの応募は、実は昨年度が初めて。初挑戦ながら7作品のうち、2作品『なぜ雪はほかの雪を付着しながら大きくなるのか』『古い汚れた雑巾が乾くとかたくなるのはなぜか?』が最終選考まで残った。

自然の面白さを感じてほしい

「ひとりいち研究」は年度の早い時期からスタート、「テーマの見つけ方」「レポートのまとめ方」などの詳しいプリントを配付し、きめ細かく生徒をサポートしていく点に特長がある。
このプリント類は希望者にCD-Rで渡しているという。緑町中学校は千葉市の理科教育センターも兼ねており、市全体の理科の先生をサポートする役割も担っているのだ。
「『できた!』『まとまった!』という気持ちをもたせてあげられるよう、どうアドバイスするかに心を砕いています。悩む時期があるからこそ、やりとげた達成感もある。あまり構えず、自然て面白いな、不思議だな、うまくできているなと感じてほしいと思っています」
肩の力を抜いて理科を楽しんでほしい。古市先生はそう願っている。

学校プロフィール

古市直彦先生(45歳)
研究主任
千葉市理科教育センター主任

〒263-0023 千葉県千葉市稲毛区緑町2-3-1
電話 043-241-4131 
ホームページ http://www.cabinet-cbc.ed.jp/school/jhs/005/
生徒数=310人 各学年3クラス

千葉市立緑町中学校の周辺は千葉大学をはじめ、教育機関が多い文教地区。学区の大部分は閑静な住宅地だ。かつては稲毛海岸が近くに広がり(現在は埋め立てられている)、明治時代から昭和30年代にかけては文人たちが訪れるリゾート地として知られた。
同校の校訓は「自主・寛容・錬磨」。25年前から他校に先駆けて「朝読書」を実施、現在も8時から20分間の読書タイムを設けている。1単位時間55分、1日5時間授業を柱に、学校環境の充実をはかっている。校舎の周囲には55本の桜並木があり、満開時の休日は学校を地元住民に開放している。

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