ポテトチップスの謎
~ポテトチップスは揚げるとなぜ曲がるのか~

千葉県千葉市立緑町中学校科学部 2年 秋友健太・前田直樹・山本一孝 3年 藏野直樹・柴田恵一・髙梨皓太郎

研究の目的

 科学部員が考えた1200個の研究テーマの中から選んだ。ジャガイモのスライスを揚げると、どのような条件の時に曲がるのか、どのような変化が生じるのか、その理由を明らかにする。

《予備実験Ⅰ》

ジャガイモのスライスを油で揚げた。

〈結論〉

自分たちで作った場合でも曲がる。厚みが薄いことが条件だ。揚げると厚みはあまり変化しないが、質量はかなり減少する。

《予備実験Ⅱ》

スライスを揚げないで、電子レンジで加熱した。

〈結論〉

薄いほど曲がりやすい。油で揚げた時とは異なり、繊維質が残った歯応えのある触感となる。厚さ0.5㎜のスライスで3分間加熱が最も適度に水分が抜け、サクッとした歯触りとなるちょうどよい条件だ。

《実験1》スライスの厚さを変える。

〈方法〉

ジャガイモ4品種(男爵薯、メークイン、キタアカリ、トヨシロ)。包丁で1.0~5.0㎜にスライスし、180℃の油に入れて1分間加熱する。揚がったチップスの縦(長軸方向)・横(短軸方向)の長さ、厚さ、質量の変化を測定、さらに切片を顕微鏡で観察する。

〈結論〉

ポテトチップスは厚さが薄い(0.3~1.0㎜)ほど、一定時間内で揚がりやすく、より大きく曲がりやすい。厚いほど内部は硬く、よく揚がらない。

揚げた後は、細胞内の水分やデンプンなどの物質が抜け、質量が減少する。熱によって細胞壁が縮み、大きく変形するためだ。

加熱によって細胞と細胞の接着が弱まり、その壊れて開いた部分に空洞が多数できる。大きな空洞は先に加熱されたスライス面でできやすく、反対面では小さな空洞が多数できる。
縦方向よりも横方向が曲がりやすい。縦軸に対し両横の縁が反り返るような曲がり方だ。

《実験2》揚げる時間を変える。

〈方法〉

180℃の油で2分間加熱する。

〈結論〉

1分間加熱と比べても、チップスの曲がり方の程度に大きな違いはない。曲がる角度には規則性がみられない。これは揚げ始めてから1分間で、曲がる方向性などが決まるためだ。

2分間揚げた方が、スライスの縁から中央部分までしっかり加熱されるため、細胞内の水分がより多く抜ける。その結果、細胞が縮んで変形したり、破壊されるなどの数が多くなる。揚がっていく過程で、水分の抜け方や細胞構造はどう変化していくのだろう。

《実験3》15秒間隔で、チップスの曲がり方や細胞の変化を調べる。

〈方法〉

厚さ5㎜のスライスを180℃の油に入れ、15秒ごとに取り上げ油を切ってから、大きさや質量、曲がり方などを測定する。揚げる時間は最長で3分間。

〈結論〉

加熱が60秒までの短い時間では十分に揚がらず、チップスは曲がりにくい。1分30秒~2分間揚げることで、より曲がる。

チップスの曲がり方(角度や大きさ)に規則性はみられない。揚げる時間が長いほど、曲がる角度は大きくなりやすい。

細胞構造は、加熱15秒ではほとんど変化しない。30秒後から細胞内の水分が気化したり、デンプンが流出する。また細胞間の接着が離れ、気化した水によって細胞が膨らむことで、大きな空洞ができていく。加熱時間が長いほど、チップス表面にも空洞が多くできる。

《実験4》揚げる温度を変える。

〈方法〉

油の温度80℃、100℃、150℃、180℃で、厚さ0.5㎜のスライスを1分間加熱する。

〈結論〉

①80℃、100℃では、水の沸点以下なので細胞内の水が気化せず、空洞ができない。水分も抜けないので、チップスは曲がらない。②150℃では、中には曲がるものもあったが、ほとんどは曲がらない。中央部分では加熱が不十分なので、細胞構造が変化せず、曲がりにくいのだ。③180℃では水分が短時間で抜けるため、中央部分まで加熱され、細胞構造が大きく変化する。先に加熱されたチップス片面で横方向の縁が反り返り、曲がったチップスができる。

《実験5》ジャガイモの横断面スライスではなく、縦断面スライスを揚げて変化をみる。

〈方法〉

スライサーで縦方向に輪切りにしたスライス(厚さ0.5㎜、1.3㎜、2.0㎜)を180℃、1分間加熱する。

〈結論〉

元々が長楕円形のメークインが、非常に曲がりやすくなった。
メークイン以外の3品種は、ほとんど変化はなかった。
曲がる条件として、スライスそのものの形が大きく影響する。縦横の長さに大きく偏りがある形の方が、縦方向を軸に横方向が曲がる可能性が高い。

《実験6》油で揚げずに、スライスの水分を飛ばす(乾燥させる)と、曲がり方や細胞はどう変化するか。

〈方法〉

厚さ0.5㎜、1.3㎜、2.0㎜のスライスを粒状シリカゲルの入ったアルミ鍋に入れて、1日後に観察する。電子レンジで3分間加熱したものを観察する。

〈結論〉

シリカゲル乾燥:表面から水分が抜け、全体にしわが寄った状態となった。細胞はやや変形したり、つぶれたりしているが、破壊されたり、空洞ができたり、曲がったりはしていない。
電子レンジ乾燥:短時間で急激に加熱するため曲がらず、しわが寄った。マイクロ波で細胞内の水分が一気に気化してしまうため、その逃げた水の跡である空洞が多数できた。レンジ庫内ではスライスが均一に加熱されるため、細胞壁が熱で固まる際に全体にしわが寄ってしまう。

《実験7》いろいろな断面形のスライスを揚げたらどうなるか。

〈方法〉

銅板で自作した型抜きで5種類(円形、楕円形、正方形、長方形、正三角形)のスライス(厚さ0.5㎜、1.3㎜)を作り、180℃の油で1分間揚げる。

〈結論〉

スライスの厚さよりも形が曲がりやすさに大きく関係している。
どのような形でも、必ず力を分散できるような位置に軸ができ、その軸に対称な部分が曲がる。
【円形】円の中心を通って半分に分ける位置を軸とし、線対称にして両端が曲がる。
【楕円形】長軸を軸に線対称な位置が曲がる。
【正方形】1本の対角線を軸として、線対称な位置が曲がる。
【長方形】1本の対角線を軸とし、もう一方の対角線のある角の位置が曲がる。
【三角形】1辺に平行で、他の2辺の中点を結んだ線を軸として、両端が曲がる。底辺と頂点を結ぶ位置を軸として、両端が曲がる。

《実験8》ジャガイモ以外の野菜を揚げた場合。

〈方法〉

サツマイモ、レンコン、カボチャ、ニンジンを横断面でスライス(厚さ0.5㎜、1.3㎜、2.0㎜)し、180℃の油で1~3分間、適度な色味になるまで揚げて観察する。

〈結論〉

サツマイモ、ニンジンは断面が円形に近いため、中心を通る軸に対して対称に曲がった。ジャガイモのチップスの場合と同様な曲がり方だ。厚みのある2.0㎜スライスでは曲がりにくい。
レンコンは断面が楕円形で、ゆるく曲がった。しかし内側に多数の穴が開いているので、内側で速く揚がって固まる部分もあった。その結果、縁や穴の部分が波打つようにたわんだ状態となり、複数箇所で曲がった。
カボチャの断面は、中心円を欠いた扇形だ。四隅付近がやや折れ曲がるようにして反り、中央部分はほとんど曲がらなかった。厚いものは斜めに軸ができ、その方向に対して端の部分が折れるように曲がる。
野菜チップスの曲がり方は、野菜の種類や細胞の大きさ、水分含量などに左右されない。それよりも、断面の形が曲がる際の軸の位置に影響する。曲がりやすさは、厚みが関係している。

研究のまとめ

《ポテトチップスが曲がる条件》

スライスの厚さは0.5㎜以下にする。より薄いほど一定時間内に揚がりやすく、大きく曲がりやすい。
油の温度は180℃にする。200℃以上になると加熱が速すぎ、チップスは曲がる前に焦げてしまう。
180℃では1分30秒~2分間以内で揚げる。
曲がりやすいスライス断面は、円形>楕円形>三角形>長方形>正方形の順だ。
油で揚げること。シリカゲルや電子レンジでは、しわが寄るが曲がらない。

指導について 千葉市立緑町中学校橋野未絵

 科学部では、疑問に感じたことを各自がメモしていくテーマ探しを半年間行っています。1000個以上の疑問点の中から、部員が最も興味をもったテーマがこれでした。部長の髙梨君は自宅の台所でも予備実験を重ね、その熱意を感じた2年生部員達も、猛暑の中慣れないジャガイモの皮むきや揚げる作業を、油と煙にまみれながら何時間も行い、根気強くチップスの様々な変化を計測し続けました。
  研究当初、細胞の変化が変形の原因だと考えていましたが、曲がり方の規則性は細胞だけでは説明できないことがわかりました。そこで部員達は意見を出し合い、チップスの形や繊維の方向、他の野菜を使うなど、様々な実験条件を考えやり遂げることができました。夏休みはほぼ毎日協力して研究を行った結果、こうして素晴らしい賞をいただけたことで、部員達も自信がつき、大変喜んでおります。今後も、身近な疑問を生徒と一緒に楽しみながら追究していきたいと思います。

審査評 審査員 宮下 彰

 本研究テーマは、科学部員一人一人が9カ月間かけて持ち寄った1200近いテーマの中から選んだものであり、科学部員の思いが熱意となり、中学生らしい優れた研究となっております。実験では、だんしゃく、メークイン、キタアカリ、トヨシロの4種類のジャガイモを使用し、ポテトチップスが曲がる条件をきめ細かい実験から得ています。その結果、曲がる条件は、ポテトの厚さが0.5mm以下、油は180℃以上の時に1分30秒~2分以内で揚げた時であると明らかにしてくれました。また、顕微鏡を駆使した切片観察を行い、結果として、加熱により細胞壁が壊れ、細胞間に大きな空洞ができること、曲がり方に規則性があることなどを見出しています。ジャガイモ以外のカボチャやニンジンなどでも比較実験を行っており、筋道がしっかりとしている研究です。特に、中学生らしい身近なものに着目し、自ら楽しみながら研究をしている様子がうかがえる素晴らしい研究です。オリンパス特別賞の受賞、誠におめでとうございます。

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