第57回入賞作品 小学校の部
1等賞

見えない空気の力を探る
―空気砲のふしぎ パート1、2―

1等賞

新潟県新潟市立坂井東小学校 6年
杉谷 岬子
  • 新潟県新潟市立坂井東小学校 6年
    杉谷 岬子
  • 第57回入賞作品
    小学校の部
    1等賞

    1等賞

はじめに

 テレビで空気砲を知り、段ボール箱で作った。空気砲にどのくらい力があるのか、正体を知りたいと思い、5年生から研究している。

昨年の研究(パート1)で分かったこと

(1) 空気砲は簡単に作れて、6m以上先にある物も動かせる。
(2) 空気砲の穴をいろいろな形にすると、最初は穴の形で空気が出るが、すぐに形が変化してリングになり、少しずつ大きくなりながら飛んでいく。
(3) 空気砲の箱に2個、3個の穴を開けると、リングがぶつかって1つになる場合、はじけて壊れる場合、壊れずにはね返る場合がある。
(4) 同じ大きさの穴では、箱が大きいほどリングは遠くに飛ぶ。穴が大きすぎると飛ばない。
(5) リングの中心にも見えない空気がある。
(6) リングは飛行機雲のような細い筋を引いて飛んでいく。横から見るとキノコ雲のような頭と茎をもった形をしている。
(7) リングの内側から外側には、空気が渦をまいている。

今年の研究(パート2)

実験1:2つの空気砲のリング同士をぶつけたらどうなるか

〈方法〉

 空気砲を向かい合わせで発射し、煙のリングの様子をビデオで撮影して観察する。①同じ大きさの穴から、同じ力で発射したリング同士をぶつける。②大きな穴(直径15㎝)と小さな穴(直径5㎝)のリングをぶつける。③同じ大きさの穴から、強く発射したリングと弱く発射したリングをぶつける。

〈結果〉

同じ大きさの穴のリング同士がぶつかると、互いに壊れてしまった。ぶつかる瞬間に互いに混じり合い、上下にのびて大きなリングを作った後で消えた。
大穴と小穴のリングがぶつかると、いったんは混ざってさらに大きなリングとなって、大きいリングの中を小さいリングがくぐり抜けた。大きいリングはそのまま進み、小さいリングはすぐに壊れて消えた。2つのリングが近づいたとき、小さいリングは一瞬のびて、大きいリングと同じほどの大きさになった。
ぶつける力を変えると、強い力のリングが弱い力のリングを押しのけて進んだ。弱い力のリングは消えた。

実験2:空気のリングは真っ直ぐ飛ぶか

(1)リングを発射して、前に立てた段ボール板の穴をくぐらせる。

〈方法〉

 ①直径5㎝の空気砲のリング→大きい穴(直径15㎝)②直径15㎝の空気砲のリング→同じ大きさの穴(直径15㎝)③直径15㎝の空気砲のリング→小さい穴(直径5㎝)の3つの場合について観察する。

〈結果〉

5㎝リングは大穴の中心を通った時に、真っ直ぐくぐり抜けて飛んだ。リングが大穴の上端近くに当たると、くぐり抜けたリングは上向きに曲がって飛んだ。下端近くに当たった時は、くぐり抜けたリングは下向きに曲がって飛んだ。
15㎝リングは、同じ大きさの穴の真ん中を通り抜けた時に、勢いよく遠くまで飛んだ。中心からずれた時は、上下左右のいずれかの向きに曲がって飛んだ。
15㎝リングは、小穴に当たった瞬間にはじけて壊れたが、さらに穴から小さいリングが出てきた。小リングは真っ直ぐ進む時、穴から出て急に上下や左右に方向が変わる時があった。

(2)発射したリングは、物にふれると方向が変わるか調べる。

〈方法〉

 前に置いた段ボール箱の上面に沿ってリングを発射し、進む様子を観察する。

〈結果〉

 上面すれすれに通ったリングは、へりの角を過ぎて急に下向きに曲がった。

実験3:空気砲で的を狙ったときに、リングの当たり方で的の倒れ方は変わるか

 リング周辺の空気の動きをさぐる。

〈方法〉

 折り紙で作った4個の的を15㎝間隔で直線上に並べ、空気砲のリングを手前から的に直接当てた場合、的の上をかすめるように当てた場合について各30回行い、的の倒れ方を観察する。

〈結果〉

 リングが直接当たると、的は後ろに倒れたり吹き飛んだりした。リングの端がかすめた時は、前から1番目の的は倒れず、2番目、3番目の的は前方に倒れるものが多く、4番目の的は吹き飛ばされたものが多かった(下表)。

  1番目の的 2番目の的 3番目の的 4番目の的
そのまま立っていた 24回 15回 4回 3回
前に倒れた 6回 12回 17回 7回
後ろに倒れた
吹き飛ばされた
0回 3回 9回 20回

〈考えたこと〉

 手前に倒れたのは、リングが進む方向とは反対向きの力が的に加わったからだ。倒れないように二つ折りにした折り紙の的で確かめると、やはり的は手前に移動した。

実験4:空気のリングを好きな方向に曲げて、飛び方をあやつれるか

〈方法〉

 リングのやや斜め後ろにうちわをそっとかざしながら、リングの動きを観察する。

〈結果〉

 リングは、うちわをかざした側とは反対側に離れるように曲がって飛んだ。

追加実験:リングの周りの空気の流れの方向を確かめる

 インターネットや本で調べると、空気のリング(渦輪〈うずわ〉)は、中心から外側に向かって空気が流れ、後ろに向かって回転しながら渦をまいているという。リングをビデオで撮影し、空気の渦が回る様子が観察できた。

今回の実験で考えたこと

 リングの周りには、渦による後ろ向きの空気の流れがある。〈実験2〉で、リングが穴の端にふれた側に曲がったのは、ふれた側の後ろに向かう空気の力が弱くなったからだ。段ボール箱の上面の角でリングの方向が下に曲がったのも、角にふれた側の空気の渦が弱くなったからだ。〈実験3〉で、上をすれすれに通ったリングで的が手前に倒れたのも、渦による後ろ向きの力のためだ。より後方の的が吹き飛ばされたのは、リングの端が的にふれて、進む方向が急に下に曲がったからだ。〈実験4〉では、リングの後ろにかざしたうちわを、後ろ向きの空気が強く押してリングは逃げていくので、かざした側とは反対方向に曲がったのだ。

ぶつかり合ったリングの大きさが変わった理由

 〈実験1〉で2つのリング同士がぶつかる直前に大きくなったのは、リングの中心から外側に向かう空気の流れが合わさり、互いのリングを外側に大きく広げたからだ。
 昨年の実験で2つ穴、3つ穴からリングを一緒に飛ばした時にも、隣同士のリングが急に角度を変えて向き合い、やはり一瞬大きなリングになって合わさってから、はじけて壊れた。

感想

 一番面白かったのは、並べた的の少し上に空気砲を撃つ実験3だった。倒れない的、前に倒れた的、吹き飛ばされた的があって驚いた。何度も絵を描いて空気の渦の方向とその力について考えてみたら、的が前に倒れることやリングの飛ぶ方向が変わることなどの仕組みが分かった。リングの正体が昨年よりもよく分かってうれしかった。

指導について

指導について杉谷 想一

 最初の壁はテーマ選びでした。自由研究の好きな兄に倣い当たり前のように研究を始めましたが、なかなか気にいる題材に出会えませんでした。そんな中、テレビで見た空気砲に興味を持ち自分でテーマに選びました。ネットや本で調べてまねするだけで面白い現象が次々と再現でき、不思議さにどんどん魅了され、2年間研究を続けました。ねらった的が逆向きに倒れたり、何かにかすめただけでリングの飛ぶ方向が変わったりなど、どこにも載っていない新発見もできましたが、理由は分かりませんでした。面白い現象を見つけるまでは楽しいのですが、理由の解明には壁がありました。どんな実験をすれば理由が解明できるのか思いつかず、やる気が起きない時もありましたが、そんな時、あらためてもう一度観察し直すことをアドバイスしました。暑い夏に閉めきった暗い部屋で根気強く実験し、絵を描きながら自分で考え、満足できる結果にたどり着けたことに感心しています。

審査評

審査評[審査員] 関根 正弘

 2年間にも及ぶ研究の始まりは、テレビで観た空気砲でした。自作してみると思いの外うまくいったことで、さらなる探究心が芽生えてきました。当初は空気の威力を体感したり発射口の形を変えたりして、空気砲そのものがもつおもしろさを味わっていました。そこからリングが飛ぶ距離に関係しそうな要因を見いだした結果、穴の大きさ、箱の大きさ、力の大きさが関係しているのではないかという仮説をたて、一つずつ条件を制御して丁寧に実験をしました。結果から結論を導き出すとともに、さらに新たな問題を見いだし、次々と研究が深まり空気砲の不思議に迫ることができました。2年目の研究となった6年生の時には、昨年までのさまざまな実験結果から分かったおもしろい事実について、なぜそうなるのかについて追究しました。自分なりの解釈を基に、空気砲の説明ができることを目指し、見えない空気の渦と力について何度もイメージ図に描いて考えました。そしてついにリングの正体を解き明かした素晴らしい研究内容になっています。

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