第54回入賞作品 小学校の部
秋山仁特別賞

抹茶のダマの研究
~抹茶のダマのメカニズムを探る~

秋山仁特別賞

愛知県刈谷市立亀城小学校 抹茶のダマ研究班6年
赤星穂美・太田晃暉・神谷駿平・平出拓巳・堀内清弘・堀部南渚・松井優希・山本真巳
  • 愛知県刈谷市立亀城小学校 抹茶のダマ研究班6年
    赤星穂美・太田晃暉・神谷駿平・平出拓巳・堀内清弘・堀部南渚・松井優希・山本真巳
  • 第54回入賞作品
    小学校の部
    秋山仁特別賞

    秋山仁特別賞

研究の動機

 小学校の校長室には茶室があり、6年生の授業で抹茶を飲んだ。抹茶の粉の“固まり”が口に入り、とても苦い思いをした。他の何人かもそうだったので、抹茶の固まり(ダマ)について研究することにした。

【予備実験】

(1)抹茶のダマの確認:抹茶1gにお湯50ccを入れて点てた。飲むと固まりが残った。これがダマで、割ってみると、中まで湿っている。(2)実験方法の決定:抹茶のダマのでき方に個人差があるので、抹茶を混ぜる「茶筅(ちゃせん)」の代わりにハンドミキサーを使い、混ぜる時間をストップウオッチで計測することにした。点てた抹茶は平らなトレイに流し、残った直径1㎜以上の固まりを“ダマ”とした。 (3)混ぜる時間:ある人が懸命に混ぜた抹茶にダマができなかった。ハンドミキサーでは1分間以上長く混ぜると、ダマは壊れて出てこない。茶道の作法では10~15秒ほど混ぜているというので、実験での混ぜる時間も15秒間を基本とした。

〈研究の目的〉抹茶を点てる時にダマはどうしてできるのか、そのメカニズムを解明する。

 インターネットで調べると、「抹茶は静電気でくっつきあっているから、“ふるい”にかけるとダマにならない」とあった。

【追究1】“ふるい”にかけて抹茶を点てる

 抹茶をふるいにかけると、大きな固まりがたくさん残った。ふるいに通した抹茶で点てると、ダマはできなかった。

《疑問》

抹茶の固まりは、本当に静電気が原因か?

【追究2】ふるいに通した抹茶を、もう一度ふるいにかける

 静電気が原因ならば、一度ふるいに通した抹茶の粒の静電気は消えず、くっつき合う力は残っているはず。2回目のふるいでは、静電気による固まりが残るかと思ったが残らず、すべて下に落ちた。

【追究3】ふるいに通した抹茶を、押し固める

 泥団子を作る時には力強く握ることから、抹茶をラップに包み、ねじって押し固めた。それをふるいにかけると、抹茶の固まりができた。抹茶の固まりは周りから押し固められてできるが、その固まりはかなり大きい。容器内の抹茶の固まりは小さいので、抹茶自身の重さで押し固められたと考えられる。事実、ふるいに通した抹茶を容器に戻して翌日使うと、再びダマができるようになっていた。

《疑問》

どうして押し固めると、抹茶同士がくっつき合うのか。

【追究4】さまざまな粉をふるいにかけ、固まりの有無を調べる

 ココア、きな粉、緑茶(粉末)、コショウ、小麦粉、のどの粉末薬「龍角散」、ライン引き石灰、チョーク粉を用意した。小麦粉は市販の「ダマにならない小麦粉」と普通の小麦粉の2種類。これらをふるいにかけると、ココア、きな粉、緑茶、普通の小麦粉、チョーク粉の5種類で固まりができた。これら、ふるいに通したものをラップに包み、押し固めると、再び固まりができた。
 「ダマにならない小麦粉」は、ふるいにかけても固まりは残らず、すべて下に落ちた。商品パッケージによると、ダマにならないのは、小麦粉の粒の大きさを均等にしているからだという。同様に、固まりができなかった「龍角散」とライン引き石灰、コショウも粒が均等だといえる。ただしコショウの場合は、ほかの粉に比べて明らかに粒が大きいので、そのことが固まらない原因かもしれない。
 粒の大きさがそろわずに“不均等”であると粉が固まりやすくなるのは、大きな粒の間に小さな粒が入り込み、すき間がより少なくなるからではないか。

《まとめ》

粒の大きさがバラバラになっていることが、固まりの要因だ。

【追究5】固まりができた粉にお湯を混ぜて、ダマができるか調べる

 ココア、きな粉、緑茶、普通の小麦粉、チョーク粉にお湯を混ぜて点ててみたが、ダマができたものは1つもなかった。

《まとめ》

抹茶以外の粉では、固まりに水分を含んでも、混ぜられることで壊れてしまい、ダマになることはない。抹茶には、点てられてもダマが壊れない秘密の力がある。

【追究6】粉を顕微鏡で観察する

 抹茶とココア、きな粉、緑茶、普通の小麦粉、チョーク粉に水を垂らして顕微鏡で観察した。粒の大きさはばらばらで、ダマができる原因とはならない。大きさは、きな粉>抹茶≧緑茶≧ココア>チョーク粉=小麦粉の順。

【追究7】粉の分量を多くして点てる

 抹茶は粉を多くするほど、ダマの数も多くなる。ほかは多くしても、ダマはできない。

【追究8】1gの体積の違いを調べる

 粉によって、あまり違いはない。しかし、ガラス棒で押し固めようとすると、しっかり固まって、手応えを感じる粉(きな粉、緑茶、ココア)と、固められずに、ガラス棒が沈み続ける粉(抹茶、チョーク粉、小麦粉)があった。

【追究9】すべての粉を水で点てる

 抹茶のみダマができた。

【追究10】お湯を注ぎ、時間をおいて点てる

 注いで10分後に点てると、抹茶のみにダマができた。

【追究11】少量の水と粉を混ぜて、ダマを作る

 抹茶1gに水2ccを混ぜると、粘土で作った泥団子のようなものができた。お湯に入れると、大きなダマが残った。ほかの粉は、絵の具を溶かした液状にしかならない。初めて発見した、抹茶だけの特性だ。
 粘土の粒は小さい。抹茶の粒も一番小さいのかも。だとすると、追究6で観察した抹茶の粒は、本当の大きさではなかったのかもしれない。追究8で固められなかった粉(抹茶、チョーク粉、小麦粉)も、粒が小さいことが共通点なのでは。

【追究12】ビー玉とBB弾(球形のプラスチック弾丸)で、【追究8】を再現する。

 粒の大きなビー玉では、木の棒を押し込めない。粒の小さなBB弾では、ビーカーの底まで押し込めた。抹茶の粒は、チョーク粉と小麦粉よりも小さいと考えられる。顕微鏡で見えた抹茶の粒は、もっと小さな粒が集まって固まった、小さなダマだったのではないか。

【追究13】粉に風を当て、飛ばされる粉の量を量る

 抹茶が一番小さな粒であれば、一番風に舞い上がるはずだ。それぞれの粉3gに、扇風機で20秒間風を当てた。飛ばされた粉の量(重さ)は、抹茶1.87g、小麦粉1.15g、チョーク粉1.13g、緑茶1.00g、ココア0.82g、きな粉0.74g。抹茶が一番飛ばされた。

《まとめ》

抹茶がダマになる原因は、(1)粒の大きさがバラバラであるため、粉の固まりができる。(2)粒が非常に小さいため、固まりがお湯に触れると粘土化して、かき混ぜられても崩れずに残るからだ。
 しかし、なぜ粒が小さいと、水分と混ざった時に粘土化するのか。粘土について調べると、粒と粒の間に含まれる水の「表面張力」によって、粒がくっつき合っていることが分かった。表面張力は触れ合う面積が大きいほど、強くなる。小さい粒ほど、固まった時の触れ合う面積が大きくなるから、くっつきやすい。抹茶も、これと同じ原理でダマになっているはずだ。

【追究14】アルコールで抹茶を点てる

 アルコールには表面張力がほとんどない。見事、ダマのない抹茶を点てることができた。

研究のまとめ

(1)抹茶のダマは、粉の固まりに水分が含まれて作られる。(2)容器内の抹茶は、自分の重さに押されて固まる。(3)粉が固まるのは、粒の大きさがバラバラなことが要因だ。(4)抹茶以外の粉の固まりは、水分を含んでも、混ぜられることで壊れてしまい、ダマにならない。(5)抹茶の粒は、ほかの粉よりもはるかに小さい。(6)抹茶のダマは、水の表面張力で作られている。(7)抹茶の粒は非常に小さく、密着しているので、水の表面張力の影響を強く受ける。その結果、粘土状の壊れにくいダマになる。

感想

 調べるほど分からないことが出てきて、大変だった。ほかの粉よりも小さな粒の抹茶の製法を知りたくなった。今回見つけたダマのできない抹茶の点て方は、1分間以上混ぜる方法、アルコールで点てる方法という、実際には使えないものだ。もっと画期的な点て方を見つけたい。

指導について

指導について刈谷市立亀城小学校 永野 英樹

 本研究は、研究班8人による膨大な試行回数から成り立っています。9月から10月にかけて毎日お茶を点てました。研究の始めのころは、まったくの手探りの状態だったので、とにかく抹茶のダマを確認しようと、ひたすら抹茶を飲み続けました。おなかがいっぱいで苦しいはずなのに、子どもたちはデータを取るために必死で頑張っていました。また、いろいろな可能性を確かめようと、子どもたちはさまざまな角度から研究の方法を考えて、実験をくり返しました。それらの実験結果が重なり合ったとき、初めて抹茶がダマになるメカニズムを発見することができたのです。今回の発見は、本当に子どもたちの努力の結晶です。研究班の子どもたちには本研究にとどまらず、これからも身近にある「不思議」を感じ取り、追究に意欲的に取り組んで、科学する心を伸ばしていくことを期待しています。

審査評

審査評[審査員] 秋山 仁

 小学校6年生8人が抹茶を点てるときにできるダマ(抹茶の粉の固まり)の生成メカニズムについて、子細に分析した力作である。研究の各段階で生じる疑問を14個の追究に分け、身のまわりに存在する、粉状のもの、ココア、きな粉、緑茶、コショウ、小麦粉、龍角散、石灰、チョーク粉を用いて、実験を繰り返しながら、以下の結論を導いている。
 抹茶のダマは、抹茶の粉にある固まりに水分が含まれることによって作られる。その固まりは、抹茶が容器の中に入っているとき、押し固められてできている。粉の固まりができる要因は、粒の大小がばらばらになっていることである。抹茶の固まりとお湯が混ざると、粘土のように丈夫なダマができる。ダマは水の表面張力によって作られている。抹茶の粉は非常に小さいため、水と混ざると水の表面張力の影響を強く受ける。
 単純な疑問に端を発しているが、静電気の影響、水の表面張力との関係、粒と粒との接面積の大小の比較など考察のレベルは深い。それにしても、校長室でお茶を点てるとは、亀城小学校はなかなか粋ですね。

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