第54回入賞作品 小学校の部
3等賞

ダンゴムシの歩き方に関する研究 Part2

3等賞

岩手県盛岡市立上田小学校 6年
山本花
  • 岩手県盛岡市立上田小学校 6年
    山本花
  • 第54回入賞作品
    小学校の部
    3等賞

    3等賞

研究の目的

 昨年までの研究で、ダンゴムシが歩くときには左右、7対14本の足それぞれに役割があって、動かしていることが分かった。左右に曲がる時の足の動かし方、触覚との関係について詳しく研究する。

実験の方法

 ダンゴムシを透明なアクリル板の上に乗せて歩かせ、下側からデジタルカメラで連続撮影する。歩かせるトンネル通路(直線、左右の曲がり角、T字路)はレゴ・ブロックで作り、天井には直接の光を防ぐためにティッシュペーパーを張った。さらに下側からLEDライトで光を当てた。
 撮影した画像を基にパソコン上で、研究者向けの画像処理ソフト「ImageJ」(注:米国立衛生研究所〈NIH〉開発、オープンソース)を使って、ダンゴムシの足14本と触角(1対2本)のそれぞれの動きを解析した。足・触角の向きは、体の中心線(体軸)に対する角度とし、この角度が小さいほど前に向いていることを表す。隣り合う足の間の角度も測った。得られた角度のデータは、マイクロソフト・エクセル(Excel)で表にまとめ、グラフ化した。

〈1〉ダンゴムシの歩行時の足の進め方

 ダンゴムシの直進、右折(内回り、外回り)、左折(内回り、外回り)の様子を、1秒間10枚で2秒間撮影した。計47回記録し、各項目1匹ずつのデータを解析した。

◇直進

● 後ろから順に足を出す。
● 前にある足ほど前を向くが、6、7番目の足はほほ同じ方向だ。
● 足を前に出すタイミングは0.3秒に1回、それぞれ0.1~0.2秒に1回ずれがある。
● 左右4番目の足を見ると、左が前に出ると右が後ろ、左が後ろの時は前と、左右の足の動きは反対。左右交互に足を動かしている。
● 足の間の角度は、後ろから順に大きい。
● 左足の間の角度が大きい時は右足の角度が小さく、小さい時は右足の角度が大きいというように、左右の動きの大きさは反対だ。

◇右折内回り


● 右足の1、2、7番目がほとんど動いていない。
● 左足の1、2番目がほとんど動いていない。
● 左右とも乱れて、ほとんど動いていなかったり、激しく動いたりしている。
● 左1、2番目と5、6番目は大体同じ動きだが、少しずれている。
● 右1、2番目と5、6番目の動きは大変ずれて、反対の動きをする時がある。
● 左右4、5番目の動きが一緒の時がある。

◇右折外回り

● 右1、7番目があまり動いていない。
● 左右4番目は、進路が曲がっている時に、大きく動いている。
● 左より右の方が大きくずれている。
● 左右で乱れている所が多い。

◇左折内回り

● 左足があまり動いていない。
● 右足は後ろから順に開いている。
● 左右の動きはほとんど一緒だ。
● 左右で、足の間の角度差が大きい。
● 左右それぞれの2、3番目と6、7番目は、互いに同じ動きをしている時と、反対な動きをしている時がある。
● 左2、3番目と4、5番目で、乱れた所が多い。
● 左右で同じ動きになっている所もある。

◇左折外回り

● 角を曲がった時に、左足の角度を一斉に小さくしている。
● 左の1、3、6、7番目、右の3、5、7番目の足をあまり動かしていない。
● 左右で同じような動き、激しく動いている所がある。
● 左2、3番目と6、7番目はあまりそろっておらず、動きが反対の所もある。
● 左4、5番目と6、7番目の動きが激しい。

《まとめ》

1.基本の歩き方
● 後ろから順に足を前に出す。
● 1、2番目は探るように、3、4、5番目は大きく動いている。6、7番目は大体同じ方向を向いている。
● 1、2番目の足は約45°を、3、4、5番目は約90°を、6、7番目は約135°を向いている。
● 左右では反対の動きをしている。
● 足の間の角度は、後ろから順に大きい。
● 1つおきの足は、反対の動きをしている。
● 3つおきでは、同じ動きをしている。
2.曲がる時の歩き方
● 内側の足はほとんど動かさない。
● 内側の足の1、2、7番目がとくに動かない。
● 外側の足は、基本の歩き方と同じだ。
● 左右同時に足を動かしている所がある。
● 足の間の角度は、内側の足ほど大きく動く。
● 左右1、2番目が同じ動きになる傾向がある。
● 左右3、4、5番目の動きが大きくなる傾向がある。

〈2〉ダンゴムシの歩行時の触角と足の関係

 ダンゴムシの直進、T字路の右・左折の様子を、1秒間15枚で2秒間撮影した。触角と足の動きのデータを解析した。

◇直進

● 触角を左右一緒に開いたり閉じたりする時と、交互に開いたり閉じたりする時がある。
● 触角を0.2秒に1回ずつ、常に動かしている。
● 触角と触角先端は、左右とも反対に動かしている。
● 触角の動きと足の動きは、左右とも周期が違い、関係がない。

◇左折

● 右触角の動きが小さくなるが、触覚全体の動きは変わらない。
● 触角を左右に振っている。
● 左の触角だけ触角先端の動きと反対だ。
● 右触角の動きと、左2、3、4番目の足が連動している。
● 右触角の動きと右足の動きは関係ない。

◇右折

● 左触角の動きが小さくなるが、触覚全体の動きは変わらない。
● 右の触角だけ触角先端の動きと反対だ。
● 左触角の動きと、右2、3、4番目の足が連動している。
● 左触角の動きと左足の動きは関係ない。

《まとめ》

1.基本の歩き方
● 触角と足の動きは関係がない。
● 同じ側の触角と触角先端は反対の動きをする。
● 触角を左右一緒に開いたり閉じたりする時と、交互に開いたり閉じたりする時がある。
2.曲がる時の歩き方
● 触角が当たった方とは逆側に曲がる。
● 触角が当たった方と反対側の2、3、4番目の足は連動している。
● 触角を左右に振る時がある。

感想

 ダンゴムシには、足の動かし方だけでなく、触覚の動かし方にも規則性があり、面白かった。パソコンやデジカメの使い方も覚えられた。海にすむ大きなダンゴムシのような「ダイオウグソクムシ」も、ダンゴムシと同じような足の動かし方をするのか気になった。

指導について

指導について山本 欣郎

 娘は小学校3年生の時にダンゴムシの交替性転向反応のことを知り、それから4年間にわたってダンゴムシの歩き方のことを研究しました。5年生と6年生の時には、ダンゴムシの7対の脚と1対の触角が歩き方に応じて規則的に動いているのではという疑問を持ち、この問題に対して粘り強く解析を進められたと思います。実験装置は身の回りにあるものから工夫をして作成していましたし、パソコンを使用した解析はすぐに覚えて自分で考えながら記録をとることができました。実際の動きを数字にし、グラフに変換して考えるというのは小学生にとってはなかなか難しい課題だと思っていたのですが、自分なりに考えて研究を発展させていました。今回の研究を通じて、科学というのが感覚でなくだれもが納得できるデータで成り立っていること、データを出すためにはたくさんのアイデアと工夫がなければならないことを学んでくれたのではないかと思います。

審査評

審査評[審査員] 大林 延夫

 人間は二足歩行ですから、歩く時は交互に足を動かします。でも14本も足があるダンゴムシはどうやって歩いているんだろう。目で見ているだけではとても足の動きについて行けません。ところが連続撮影が出来る便利なデジカメがありました。山本さんの研究では、この撮影画像とパソコンのソフトをうまく利用してデータ化し、足や触角の動きを見事にとらえる事に成功しました。
 やはり左右の足は交互に動かすようですが、後ろの足から動かし始め、順次前足に動きが移っていく様子がよく解ります。曲がる時に内側の足があまり動かないのは、自動車や戦車のキャタピラと同じなのですね。触角は足の動きとは関係なさそうですが、方向転換の時にはセンサーになっていますね。運動を司る器官である足と、感覚器官の触角の役割の違いがよく解りますが、前方の2対の足の役割や、触角を開いたり閉じたり、また先端を曲げる意味などまだ面白そうな謎がありそうです。これからもダンゴムシと仲良しでいて下さい。

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