第49回入賞作品 小学校の部
2等賞

変形菌七不思議の解明

2等賞

茨城県かすみがうら市立宍倉小学校6年
 橋岡 久嵐梨鈴
  • 茨城県かすみがうら市立宍倉小学校6年
     橋岡 久嵐梨鈴
  • 第49回入賞作品
    小学校の部
    2等賞

    2等賞

研究の動機

 国立科学博物館で変形菌8種類の子実体やモジホコリの原形質流動を観察し、変形菌の生活環(ライフサイクル)などについて教えてもらった。小さくて、とてもきれいな変形菌に興味がわいた。

不思議1:仲間がいるって本当!?―筑波山で採集

《実験1》

変形菌にはどんな種類の仲間がいるのか。

〈結果と考察〉

大きなスギやヒノキがそびえる筑波山神社の裏山で見つけた。一帯には倒木や落ち葉、不気味なキノコ、見たことのない昆虫もいた。採集した14種類のうち、図鑑で同定できたのはキフシススホコリ(子実体と変形体)、タマツノホコリ(未熟変形体)、ハダカコムラサキホコリ(子実体)だ。

不思議2:モジホコリのモジ生―ライフサイクル

《実験2》

実験1の子実体、変形体を培養したらどう変化するのか。

〈方法〉

試験管に斜面寒天培地をつくり、エサのオートミールと水(1)、さらにバクテリア(0.1)を入れた。各試験管に子実体をけずり胞子を入れ、24時間ごとに観察した。

〈結果と考察〉

顕微鏡で見ると、胞子の形は種類によって異なり、硬そうな膜に包まれている。子実体は発芽しなかった。キフシススホコリの変形体は、増えるペースはモジホコリよりも遅いが、オートミールを食べて大きくなる。管のところの培地がだんだんへこみ、水が出てきた。寒天の成分を食べて、水分を出しているのだ。モジホコリは寒天を食べてしまうことはなかった。変形菌は種類によって性質や特徴が違う。

不思議3:ふたモジがひとモジに!?―イリュージョン

《実験3-1》

モジホコリは集団どうしが一つになったり、管でつながったりする。その理由や規則性は。

〈方法〉

寒天培地の中心にエサ、周囲にモジホコリの10個の集団を置いた。

〈結果と考察〉

各集団は扇状に広がり、他の集団とくっついた。やがて集団と真ん中のエサとは太い管で、ほぼ最短距離で結ばれた。扇状に広がることで、他の集団やエサを見つける可能性を広げている。集団どうしが最短距離の管で連結するのは、早くエサにたどりついた集団から栄養を回してもらうためだ。効率よく食べ物を摂取しているのだ。

《実験3-2》

集団に色をつけて、混ざり合う様子を観察する。

〈方法〉

赤と緑の食用色素、ミキサーで粉砕したホウレンソウとニンジンをオートミールに混ぜて与えた。色違いの集団を寒天培地に植える。

〈結果と考察〉

ホウレンソウとニンジンでは色がつかなかったが、食用色素でオレンジ色、緑色の集団ができた。この2集団の真ん中にエサを置いたら、それぞれエサに向かって伸びたが、色は薄くなった。エサから離れたモジホコリは、元の黄色に戻った。モジホコリの通った跡にイソジンをたらすと、ヨウ素でんぷん反応により濃い紫色に染まった。モジホコリはでんぷんを出しながら移動している。しかし、色が薄くなったモジホコリの通り道に色はついていない。色素は栄養ではないので排出されると思ったのだが、不思議だ。

不思議4:迷路が解ける!?―エサまでまっしぐら

《実験4-1》

テレビ番組で、モジホコリが迷路を解いて最短距離を探し当てる実験を紹介していた。通路の所々に置いたモジホコリがしだいに、スタートとゴールのエサを目指して互いに管をつなぎ合い、行き止まりにあった部分を消失させて、最終的に最短ルートの1本の管を作るという内容だ。自分でも試してみた。

〈方法〉

厚い1㎝の寒天培地に、深さ5㎜の迷路を作った。モジホコリを間隔をあけて通路に置き、1時間ごとに観察した。

〈結果と考察〉

モジホコリが通路からはい上がり、培地の表面全体に広がってしまい失敗した。

《実験4-2》

テレビで実験を紹介した北海道大学の研究室に問い合わせたところ、モジホコリが全体に広がらないように、プラスチックのシートを寒天培地にのせていたことが分かった。迷路の型紙やアドバイスをいただいて、再実験した。

〈方法〉

シートにラミネート用フィルムを使い、迷路部分を切り抜いて寒天培地にのせた。

〈結果と考察〉

モジホコリの行き止まりの管はなくなり、最終的にスタートとゴールが管でつながった。行き止まりの部分は徐々に、エサとエサを結ぶ主道に移動していった。

不思議5:くらやみが好き!?―やみ夜に光るモジホコリ

《実験5-1》

モジホコリの変形体は、明るいところが苦手だという。エサまでの途中に明るい場所を作ったらどうなるか。

〈方法〉

寒天培地のシャーレをアルミホイルで包み、モジホコリとエサの間だけに光が当たるように切り取った。

〈結果と考察〉

明るい所を避け、最終的に遠回りをしてエサまで到達した。変形体は光を合図に子実体になるが、なぜ光を避けて、子実体にならないようにしているのか。

《実験5-2》

光の色によって行動も変わるか。

〈方法〉

赤・青・黄・緑の色セロファンを、それぞれシャーレの4分の1の面積にはった。中心にモジホコリ、等距離の4カ所にエサを置いて、何色のゾーンのエサに移動するか調べた。

〈結果と考察〉

10回試し、各色に4回ずつ移動した。好きな色、嫌いな色はない。

不思議6:血が流れている!?―原形質流動の観察

 モジホコリの管の中では、血液のように原形質が流れ、時々逆流する「原形質流動」が顕微鏡で観察できる。エサを効率よく見つけたり、光を感じ取るために役割を果たしているのではないか。

《実験6》

エサを見つけると、体中にその情報を伝えるために原形質流動の流れが変わるのだと考え、その時間を計ることにした。

〈方法〉

寒天培地にモジホコリとエサを1.5㎝離して置いた。30分ごとに観察し、原形質流動の流れが何秒おきに変わるのか、ストップウオッチで5回ずつ計った。

〈結果と考察〉

エサに到達するまでに9時間かかった(時速1.7㎜)。エサに近づくにつれて、原形質の流れが変わる時間が長くなった。小さな管が吸収されて一本の太い管になったことで、一度に流れる原形質の量が多くなったからではないか。また、30分間に進んだ距離が長いほど、流れが変わる時間も長い。これは距離が長くなった分だけ、原形質流動の時間がかかるからだと思う。
不思議7:意外とわがまま!?―好物おしえて!!
《実験7》

実験3-2でモジホコリは、ニンジンよりもホウレンソウを混ぜたオートミールをよく食べた。食べ物に好き嫌いがあるのか。

〈方法〉

2種類の食べ物をモジホコリから等距離に置き、どちらへ先に到達するかで「勝ち」を決めた。食べ物は主食系(パンごはんパスタ・そば・うどん・ラーメン)、野菜系(トマト・ナス・キュウリ・オクラ・玉ねぎ・ピーマン)、果物系(オレンジ・バナナ・パイナップル・リンゴ・ブドウ)、粉系(小麦粉・きな粉・茶・コーヒー・カレー粉・片栗粉)、調味料系(・オリーブ油・しょう油・砂糖・塩・酢)、菌類系(みそ・ヨーグルト・納豆・キムチ・ぬかみそ・イースト菌)、殺菌系(唐辛子大根・にんにく・生姜・わさび・梅干)、肉系(焼いた豚肉・鳥肉・牛肉、生の豚肉・鳥肉・牛肉)の8系45種類についてトーナメント方式で調べた。

〈結果と考察〉

各系の下線の食べ物が第1位。一方の食べ物に群がった後に、もう一方の食べ物に向かうのもあった。両方とも好きだと考えられ、主食系と果物系、野菜系で多く見られた。甘い物が必ずしも好きなわけではなく、砂糖には群がらなかった。またお酒に強く、最初にオリーブ油に向かったモジホコリが、急に方向転換してお酒に向かった。殺菌系のわさびと一緒にするとモジホコリは一切動かず、原形質流動の流れもなく、死んでしまった。梅干では、半径2㎝以内に近づくことはなかった。わさびには強力な殺菌作用がある。唐辛子や大根には意外と殺菌作用はない。菌類ではみそ以外の食べ物を避けた。みそ以外の食べ物にいる菌の方が、モジホコリよりも強いのだ。肉系では焼いた豚肉が第1位だったが、牛の生肉と焼肉とでは、生肉に群がったのが不思議だ。粉系で避けたのはコーヒーだけ。カレー粉にも近づいたのが意外だった。モジホコリにも、法則のない好き嫌いがある。

感想

 モジホコリが増えずに、困った時もあった。試行錯誤をくり返し、室温を25℃に設定したらうまく育った。さらに温度が上昇すると死滅する。モジホコリは地球温暖化の影響を受けやすい生物だ。このような小さな生物を、私たちは守って行かねばならない。

指導について

指導についてかすみがうら市立宍倉小学校 木村新一郎

 国立科学博物館の特別展で、変形菌の原形質流動を観察し、ライフサイクルについて興味がわいて研究を始めた。
  変形菌の研究をするには、変形菌を培養することが必要であり、自宅の1室はモジホコリの研究室だったと聞いている。
  研究方法でうまくいかないところを、専門の先生に質問して研究を進めた。継代培養して増殖させたり、丁寧にスケッチや観察記録をとり、莫大なデータを集め、7つの不思議を見事解明している。特に、原形質流動の管が太くなればなるほど、えさに到達するまでの時間が遅くなっていることは、新発見であり、真性粘菌の研究をしている方からも評価をいただいた。
  モジホコリの科学技術への応用や、地球環境との関係についても興味をもち、普段はあまり気にしない生命へも目を向ける態度が育った。

審査評

審査評[審査員] 小澤紀美子

 科学博物館で「変形菌(真性粘菌)」に出会い、とても小さく美しいと興味をもち、そこから探究が始まった研究です。身近なところでどんな種類の変形菌がいるのか、どのようにして胞子から変形体になるのか、そのライフサイクルを探る、なぜ、一つの集団になるのか、神経がないモジホコリが複雑な迷路を探し当てることが出来るのか、暗闇が好きなのか、原形質流動の役割を探る、食べ物の好き嫌いがあるのか、という疑問について、予想(仮説)をたて、実験方法を考え、検証を積み重ねている努力に好感が持てます。実験の材料も身近にあるものに注目して、きめ細やかに実験を積み重ねており、根気のいる実験でしたね。そうした過程で光学顕微鏡で原形質流動の流れの速度を観察し、興味深い結果、原形質の管の太さと流動の速度との関係性を見いだしていることや、45種類の食べ物で変形菌の食べ物の好き嫌いをトーナメント方式でその法則性を実験していく過程はとても興味深く、今後も探究を継続してください。

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